掃除をしていたら親父に手招きされる。
親父のところへ行けば抱きかかえられて、親父の膝の上に座らされる。
私は恥ずかしくなって俯くと親父から頭を撫でられる。

「親父恥ずかしいよ!」
「グラララ。」
お前はたった一人の娘だからな、と言われる。
嬉しくてニヤニヤしてしまう。
顔を上げれば凄い顔で私を睨む隊長たちがいた。
何これ怖い。

そう言えばこの前エース隊長からきつく言われたばかりだった…。
新入りだからって俺らの暗黙のルールを知らないふりしてたら殺すぞ、と言われたのだった。
私は殺す、というびっくりワードに震えたが、暗黙のルールとは何でしょうかと聞くことに成功した。
親父の独り占めはだめ絶対、だそうだ。
親父に気に入られようなんて思うんじゃねえ!おまえが女だからって容赦しねえ!俺たちをなめるなよ!と散々なことを言って、私の部屋から出て行った。


「あ…、親父!私掃除の途中だから…」
「かまわねえよ。」
そう言って私の頭を撫でる親父に心臓を鷲掴みにされる。
一生ついていきます、と叫びたい衝動に駆られるがマルコ隊長の物騒な顔を見てそんなことしたら死ぬだろうと実感する。
ナースがやってきて親父に検査の時間なので、と言われ親父と離される。

大変名残惜しいが、掃除に戻ろうとモップのところへ行こうとしたらマルコ隊長にちょっと顔貸せよい、と呼ばれる。
聞こえないフリをしていたらマルコ隊長に服を捕まれ引きずられる。

「きゃああああ!」
「うるせーよい。」

殺されるかもしれない、とマルコ隊長の鬼みたいな顔を見て思った。

連れて行かれた先にはエース隊長とサッチ隊長ががいた。
新人にはどこも厳しいもんだよね、怖い。

「お前俺が言ったこと覚えてねえのかよ。」
「何のことでしょうか…。」
「てめえ。」
「まあまあ。」
「サッチ、女だからって甘く見てたら親父がどうなっても知らねえよい。」

私の胸ぐらを掴むエース隊長を止めるサッチ隊長に、それを傍観するマルコ隊長。
たかが新人教育のためにこんな隊長陣が出てきていいのか。
いや、よくない。


「俺親父と一緒に寝たことあるもん。」
へへへ、とサッチ隊長が笑う。
だから多分親父俺のこと一番好きだもん。と言うや否やエース隊長に髪を燃やされる。
ぎゃああ、と燃え盛る頭を見てのた打ち回っている。

「馬鹿め。俺なんか一緒に風呂入ったぜ…!あとその言葉遣い気持ち悪いからやめろ。」
不気味にくっくっと笑っているエース隊長。
そしてそれを無表情で見つめるマルコ隊長。

「まだまだだな…エース。」
「何だと!?」
「これを見ろ…。」

私とエース隊長はマルコ隊長の差し出す足に釘付けになる。

「綺麗ですね。」
「…まあ男にしてはな。」
「どこ見てんだよい!靴だ、靴!」
「…女物ですね。」
「マルコ…。」
「その顔やめろよい。これはなあ親父からのプレゼントだよい。」
「!!!?」

エース隊長は驚きと悔しさの混じったまなざしでマルコ隊長の靴を見つめる。


「マルコ…!!」
ふつふつと怒りがこみ上げているらしいエース隊長は今にもマルコ隊長に襲い掛かりそうである。
そんなマルコ隊長はとても得意げである。
というか親父の一番なんて決められるわけがないと思うのだけど…。
あ、でも、

「私なら女だから親父と結婚できる!」

やっぱり新入りだけど親父の一番は私かもしれない。
とニヤニヤしていたら、般若の様な顔をした隊長たちに囲まれる。
いつの間にかサッチ隊長も復活したらしい。
自分の言動に気をつけよう襲い掛かる三人を見て思いました。






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