窓の外を見れば変な看板がある。
エース、見て!!!!とエースの方を見ればハンドルをがっちりと握り、瞬きを全くしていないことに気付いた。
昨日エースから免許とれたからドライブ行こうぜーなんて電話がかかってきて今に至る。
ルフィは残念ながら部活なので不参加である。


「ちょ、エース。」
「運転中に話しかけるんじゃねえ!」
何故か怒られてしまった。
免許とってから助手席に人を乗せるのはお前が初めてだ。
と戦慄する事実をエースは口走った。
事故をしないように祈るしかない。
エースのファンの女の人たちが聞けば光栄だわ、と言って喜ぶに違いないのだが。


「どこ行くの?」
「着いてからのお楽しみだ。もううるさいから寝てろ。」
相変わらずガチガチのエース。
どんだけ緊張してるの、と口から出そうになったが我慢する。
エースなりに私を安全に目的地へ届けたいのだろう。
あまり眠たくもないのだが、今からどれくらいかかるかも分からないので寝ることにした。






「着いたぞ。」
「んー」
ゆさゆさと私を起こすエース。
むくりと起き上がれば海が広がっていた。


「わー!海!」
「よし、降りるか。」

私は勢いよく車から飛び出す。
後ろからちょっと待て!とエースの怒鳴り声が聞こえる。
ここはエースとルフィと私の三人でよく来ていた海だ。
ガープじいちゃんに泳げないルフィはスパルタな特訓を受けていた。
エースはルフィを沈めるじいちゃんに本気で殴りかかり、私はそれを眺めてよく爆笑したものだ。
そして爆笑していたら私もじいちゃんに海に引きずり込まれた。
いい思い出だ。


「懐かしいだろ。」
「そうだね。」
エースを見れば愉快そうに笑っている。
運転中とは大違いだ。


「何でここに来たの?」
「まあ、なんとなくだ。」
エースらしい答えだと思った。
私は暖かくなってきたとは言え、私たちしかいない砂浜に腰を降ろす。


「お前失恋したんだろ?」
「!?何で知って…!」
「何年一緒にいると思ってんだよ。」
「…」
「ルフィも何も言わねえけど、心配してるぞ。」
「別にいつも通りだもん。」
「お前が元気ないとすぐ分かるんだぞ。特にお前は顔に出るから分かりやすいしな。」


そうなの!?と言えば気付いてなかったのか!と驚いた顔で私を見るエース。
だからナミやウソップにも言わなくてもバレていたんだ…。


「誰もが経験することだよ。」
「エースはしたことないでしょ。」
「まあ俺はねぇけど、ほとんどの人があるだろ。」

馬鹿エース!とエースをポカポカ殴れば笑っている。
悔しい。


「当分はそいつのことばっかで頭が埋め尽くされてるんだろ。」
「多分ね。」
「なあ、名前、逃げることは恥ずかしいことじゃない。」
「どういうこと?」
「ずっと不安なまま誰かを想っているよりもいい方法があるはずだ。」
「?」
「もっと違う目で見てみれば、何か変わるだろうよ。」
「よく分からないわ。」
「お前を想ってる相手がいるはずだ。」
「そんなのいないよ。いたって、私…。」
「俺は妹同然のお前にあんまり傷ついて欲しくないんだよ。」


そう言ってエースは私の頭を撫でる。
最近人からよく頭を撫でられるなあ、と思ってマルコ先生のことばかり浮かんできた。



「よし、まあこのぐらいにして、貝でも掘るか!!」
「貝!?」
ルフィに食える土産持って帰んないとな!
と言ってお尻に付いた泥を払い、私の手を引っ張り走り出す。
変わらないなあ、と何だか嬉しくなった。
いつもルフィとエースは私が落ち込んだり、元気が無いとき特に何も言わないでどこかに連れて行ってくれた。








0503

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -