「正義とは何だろうかね、ルッチ。」
死体の山とそれをぼんやりと見つめる血だらけの女。
この女はCP9として共に任務を遂行する者だ。
言うまでもなく血とは他人のものであり、この馬鹿女のものではない。


「女、子どもまで殺して私たちは正義と言えるんだろうかね、ルッチ。」
今にも泣きそうだよ、と言うこの女の顔からは涙のかけらもうかがえなかった。
それどころか無表情だった。


涙なんて俺たちには必要ない。
殺される者が悪人であろうが善人であろうが関係ない。
任務だから殺すのだ。
感情なんてものが俺たちの中にあるのならいつ発狂したっておかしくないだろう。


「私ね大好きな人のお嫁さんになるのが夢だったんだ。」

ただ淡々と過去の夢を語る女。
夢のある明るい男と結婚して、子どもは三人で、大きすぎず小さすぎずな家に住んで、たまには家族で旅行して、子どもが大きくなったらガーデニングを趣味にして、旦那と二人でゆっくりとした時間を過ごすの。かわいくて平凡な夢でしょ。と、何を考えているのか読めない顔で言う。



「でもね、私たぶん好きでも嫌いでもないルッチと一生を遂げる気がするんだ。」
馬鹿みたいだよね。と言うこの女。
ああ、馬鹿みたいだ。
俺もそう思う。


「そういうのは私たちが殺しちゃったんだね。」



まるで何も考えてないような相変わらずの表情でそう言う女。
本当は泣きたいのかもしれない。
本当は怒りたいのかもしれない。

いつもこうやって少しずつ出口をなくしていく。












20100414
そういうの=感情



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