少女と出会ったのは偶然だった。
今回の島ではログが溜まるのに2週間もかかるらしい。
そういう理由で島に入ってはいけない病を克服して、上陸した。
やさしい人が多い街と聞いていたが、見るからに怖い人たちに絡まれてしまった。
ナミの間違った情報を恨んだが、逃げ出すしかなかった。
やみくもに走って民家の茂みに隠れた。
音もしないしもういなくなっただろうか。

「誰かいるのですか?」
窓を見れば少女がいた。

「あ、悪ぃ。俺…」
「?」
よく見れば俺の顔なんか見ないでただ正面をまっすぐ見つめていた。
もしかして目が見えないのだろうか。

「だいじょうぶですか?」
とても悲しそうに笑う少女だった。
よかったら私の家でお話しませんか?
そう言われ家でもてなされた。
少女は俺の話をキラキラと目を輝かせて聞いた。
俺も嬉しくなっていろんな冒険の話をした。
仲間の話や魚人を倒した話、空島の話やアラバスタでの出来事。
話ているうちに日は暮れてしまい俺は仲間のとこに戻らなくちゃならねえんだ、と言う。
たまに見せる悲しそうな笑顔で良かったらまた来てくださいね、と送り出された。
それから毎日通った。
俺はカヤに話したみたいにその少女が元気になるようにいろんな話をした。


「キャプテンウソップは本当に勇敢ですね。」
「まあな!」
「私もあなたのようにいろんなものが見れればいいのに。」
あ、ごめんなさい、とまた悲しそうな顔で笑う。
俺は何と言葉をかけていいのかわからず黙る。

「別にこの生活も楽しいんですよ。街の人たちも優しいから私は何不自由無く過ごせますしね。」
「あ!俺の船員にすげえ医者がいるんだ!そいつに診てもらえば…!」

少女は相変わらず悲しそうな笑顔で笑った。

「ありがとうウソップさん。でも私の目はもう治らないのです。」
「でもチョッパーなら!」
「本当にありがとう。でももういいんです。」

悲しそうなのに少女は涙を見せない。
俺がいないところでは泣くのだろうか。

「俺はお前が見えるようになったらと思って!」
「私の目はもう二度と見えません。」
生まれつきですからね、と相変わらず笑う少女。
俺は何も言うことができない。

「きっとウソップさんの仲間のお医者さんに診てもらっても変わらない事実です。ウソップさんが悲しんでしまうでしょう?」
だからいいのです。
そう言って少女は俺の顔に触る。
鼻がとても長いのですね、髪はもじゃもじゃとおかしそうに笑う。

「キャプテンウソップのファンクラブ会長にしてください。」
「あだりまえだ…!」
「あなたは本当に優しい人ですね。」

ふふふと嬉しそうに笑う少女は俺の涙をぬぐう。
俺は何もできない自分が情けなくてただ泣く。


「いつ行くのですか?」
「明日。」
「…そうですか。寂しくなりますね。」
「お前は大丈夫か?」
「ええ、私明日あなたを港まで送りに行きます。決して迎えに来ないでください。」


俺は不安に思ったが少女はそれを言う時悲しそうに笑わなかったので信じることにした。
船に帰ってからも少女のことで頭がいっぱいだった。
眠れないままその日が来た。

「すごい顔だぞ、ウソップ。」
おまえはすっきり寝たって顔してるよルフィ。
「今日でこの島ともお別れねー。」
ぜんぜん名残惜しそうじゃないなナミ。


出航準備にいそいそと取り掛かり始めるみんな。
ウソップ仕事しろ、とサンジに蹴られたが俺は港を見続ける。
まだ来ない。
帆を貼りもう出航までわずかだ。
まだ来ない。

「…っ、なあもうちょっと出航遅らせねえか?」
「何か忘れ物でもしたの?長鼻君。」
「駄目よ、ウソップ。雲行きも怪しいし早く出ないと。」

少女はどうしただろうか。
もしかしたら家から出るのが怖くなって家にいるのかもしれない。
もしかしたら道中で何かあったのかもしれない。


船はいかりをあげ出航する。
少女の無事を祈る他無い。
「ウソップ何泣いてるんだ!?」
「そんなに大事な忘れ物だったの?」
俺はただ泣く。
結局少女に何もしてやれなかった。

「ウソップさん!!!」
「!」

港を見れば少女がいた。
少女が港に着いたらしい。
船はもう出てしまっていたが彼女は大きな声で叫んだ。

「私初めて一人でここまで来ました!ウソップさんのおかげです!」
「…!!!」
「本当にありがとう!目は見えなくても冒険はできるみたいですね。」

少女は嬉しそうに泣きながら手を振っていて、だんだん見えなくなった。
俺も嬉しくて涙が止まらなかった。
俺は少女のために何か残せたのだろうか。
俺も少女と話している時間はとても心地いいものだった。
少女の笑顔はとても綺麗だった。










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