ライブラの一室にある大きな水槽。特注のシリンダー型の中が彼が生存できる場所。
創られた彼は世界で唯一の存在で、同じ種族はいない。特別な種族である。

「ひとりなんですよ、僕は」

彼は唐突にそう言って背を向けた。
なに言うの。みんないるじゃない。
それに世界でひとつだけなんて特別なことじゃない。

「貴方はヒューマーです。僕の仲間じゃない」

今まで一緒に過ごした日々の中で冷酷な言葉だった。
ずっとそう思いながら彼はライブラで日々を過ごしてきたのだろうか。
手を伸ばしたら届く距離にいるのに透明な分厚い硝子で隔たれて届かない。
なんてもどかしい。

「種族なんて関係ないでしょ」

言葉で伝えるのは苦手だ。うまく紡げないし、相手に届くかわからないから。

「ツェッドはひとりじゃないし、させない」

滲む視界で彼と目が合った。やっとこっちを向いた。
水掻きがついた手となにもついてないあたしの手が硝子ごしで重なる。

「一緒に生きようよ」

きみとしあわせになりたいと言ったら、笑うかな

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