大きな体格と恐々しい外見とは裏腹に優しく触れてくる手が愛しい。
左右異なる色をした瞳も、少しふっくらした唇も、美しさに眩惑して目がくらむ。
この関係に未来はない。例え一方的な不毛な恋だとしても、かまわない。
今この瞬間が満たされるのならそれでいい。それ以上望まない。そう思っていた筈なのに。
どうしてこんなに胸が痛むのだろう。どうして涙がとまらないのだろう。
彼の温もりが私の体を包み込む。まるで壊れ物に触れるように。
たくさんのキスの雨を降らし、身がほどけるような甘い言葉を紡ぐ。
でも行ってしまう。彼が生きる世界に。私が決して踏み入れてはいけない常闇に。

「ごめんな」

離れていく温度。残った煙草と香水のにおい。その残り香さえ不確かで。
本当に、狡い人。


さよならを並べた愛が腐り落ちるまで


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