※実写

寝苦しい夜だった。横になってもなかなか寝付けなくてのっそりと立ち上がる。
溜まった息を吐き出してキッチンに向かって水を一杯飲んだ。それでも取れない違和感。
頭は靄がかかっているかのようにぼんやりとしている。いつからこんな風になってしまったんだろう。睡眠導入剤を服用しないと眠れない夜が来るなんて思ってもいなかった。カウンセリングを受けても症状は一向に良くなる気配はないし、毎日同じ日々の繰り返し。生きているのに死んでいる。そんな感覚だ。もういっそ、死んでしまおうか。そのほうが楽かもしれない。湧き上がる虚無感が目の奥で涙に代わるその刹那、車のエンジン音が聞こえた。はっと顔をあげて息を呑む。そんな、まさか。弾かれたように玄関のドアを開け確かめた。一台の車がスピードを上げてこちらに向かっている。それは確かに彼で、淡い希望が微かに胸に宿った瞬間だった。
黄色いカマロのヘッドライトが私を照らす。今の私はあなたの目にどう映ってる?弱々しく微笑むと、それは重音を響かせ変形していく。

「バンブルビー」

ひどく掠れた声だった。それでも彼には届いてるようで、膝をついて視線を合わせてくれた。優しい青い瞳が懐かしい。まるであの頃に戻ったみたい。

「ずっと待ってた」

金属の頬に手を添える。彼は応えるように目を細めた。

『“ただいま”“愛しい人”』

奇跡が瞬くこの星で、また君に逢えた。

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