book | ナノ

NRCに入学して魔法が使える世界にも勉学はつきものだということ。
国語や数学のように様々な教科があって、もちろん試験もある。
システムは元居た世界の学校と変わらない。
幼い頃に読んだ様々なおとぎ話の主人公たちも血のにじむような努力をして開花した才能をつかみ取ったのだろうか。
生憎、魔法の使えない私に主人公たちの苦労はわからない。そもそも勉強は苦手だし。
しかし今なら理解できる気がする。平々凡々な人間である私でもNRCの授業についていくのは困難だから。
魔法史、占星術、飛行術(これは主に記録係だけど)、その他諸々。
聞きなれない授業のうえに勉学があまり得意でない私はエースやデュースに習いながら授業についていける状態。試験もなんとか合格ラインをクリアしている。
実技が行えない私は座学で稼ぐしか術がない。

だがしかし、錬金術とだけはどうしても分かり合えない。
複雑で様々な方式を覚えなくてはいけないし、ひとつの答えを導き出さないといけない。
例えるなら、数学だ。
問題に対して的確な方程式を覚えていたらいいけれど、手掛かりを見いだせない私はひとつの回答を求めて暗中模索する。
実技の授業も散々でクルーウェル先生に叱られっぱなし。今日も補習を言いつけられたばかりなのだ。

「はじめるぞ」

クルーウェル先生は厳格な人だ。出来の悪いの生徒には大量の課題を与え、優秀な生徒にはとことんご褒美をあげる。
無論、私は前者のひとり。いつも先生を困らせてはお叱りを受ける始末。
それでも不思議と先生のことは嫌いになれなかった。
出来なくて失敗をしても親身になって教えてくれるから。
その姿勢が生徒の立場である私はうれしかった。先生には申し訳なく思っているけれど。

「聞いているのか子犬」

ぱしん!と、クルーウェル先生が持っていたムチを鳴らした。
どうやら本日の補習は私一人だけらしい。
必然とワンツーマになるため、いつもより鋭い眼光が私を射貫いた。
思わず肩をすぼめて教科書で顔を隠し、「すみません」と一言。前言撤回。やっぱりこわいや。

「なにがどうわからないんだ」
「なにがわからないのかがわかりません」
「ふざけているのか」
「決してふざけてなどおりません…」

消え入りそうな声で答えると、先生は深いため息をもらした。とうとう愛想をつかれたかな。おずおずと教科書から顔を出すと、先生とばっちり目が合った。
綺麗な透き通ったグレーの瞳がとても綺麗だ。
どきりと胸が高鳴ると同時、先生の手がのびた。ぶたれる。そう思い反射的に固くまぶたを閉じて衝撃に備えるが、先生はあろうことか私の頭をくしゃりとなでた。

「わかった。では授業の復習からはじめるとしよう」

全て理解するまで帰らせないからな。

そう言って先生はトレードマークである毛皮のコートを脱ぎ、おもむろに赤のネクタイをゆるめた
先生のひとつひとつの動作に目を奪われてしまい、もう補習どころではなくなってしまう。
高鳴る胸の鼓動、頬が紅潮するのがいやでもわかった。
ああ、どうしよう。私はこの感情の名前を知っている。

「こら子犬!聞いているのか!」
「す、すみましぇん!」

拝啓、デイビス・クルーウェル先生。ときめきがとまりません。
生徒である私はどうしたらいいのでしょうか。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -