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「っはぁー…ったく、何、考えてんだ、お前はッ、マジで、ッハァ」

未だ整わない息を吐き出しながら、もう離してたまるかと名前を思いっきり腕の中に閉じ込める。
容赦なく力でブランコから後ろに引き摺り上げて立たせ、その存在を確かめるように腕に力を込めた。
心配させんじゃねえよ。
つうか何してんだよ、
オレが見付けなかったらどうしてたんだ。
こんな震えて、冷えきってんじゃねえか。
ったくマジでお前はっ!

「ペットが勝手に逃げてんじゃねえよ」
出てきた言葉は自分の動揺を隠す為のただの見栄だ。
体を震わせ、ボロボロ大粒の涙を垂らして泣き出した名前にどうしたらいいか焦る。
オレの服に名前の涙がポタポタ落ちて、じわりと服の色を変えていった。
あーっ!ったく、何泣いてんだよ。
泣き止めよ。
オレがマジギレしたと思ったのか?
別になんも怒ってねえよ。
どうやったら泣き止む?
分かんねえ、勘弁してくれよ。
ゴチャゴチャの思考を振り払うように
一度、深呼吸して…

「…泣き止めよ。涙の止め方なんか分かんねえんだから」
「う、」
「泣き止め」
「うんッ、うぅ、」
「ったく、手が掛かるペットだな」
「ごめっ、なさいッ」

泣かせたかったわけでも謝らせたかったわけでもねえ。
あんまり多くは笑わないコイツに笑って欲しいだけだ、オレは。
そんな事言えるはずもなく、結局コイツの涙も止まらない。
片手で頬を掴んで強引にコッチを向かせた。
振り向いた名前の顔は涙で濡れて、泣き腫らした目と目が合う。

「…ひでぇ面」

こんな事が言いてえんじゃねえんだ。
つうか泣いた顔だってぶっちゃけ嫌いじゃねえ。
覗き込んだ、涙で潤んだ名前の目の中に歪んだ自分が映った。
情けねえ面してんな、ったく。
目に溜まった涙が頬を流れる前に、口を塞いだ。

お前、知ってたか?
オレは欲張りで強がりで独占欲の塊なんだよ。
まあ知るわけねえよな、お前に言葉で何かちゃんと伝えてやった事なんかねえし。
けどお前は…オレだけ見てりゃいいんだよ。
それだけ知っとけ。
言えもしない事を頭ん中でゴチャゴチャ考えて、そのうちコイツの息の根止めちまうんじゃねえかってくらいに唇を貪った。





「なぁ…なんで勝手に部屋出てった?」
「ッ」
分かんねえ事をストレートにぶつければ、名前は体を少し強ばらせ黙りこんだままじっとしている。
「何も持ってねえお前が、これからどうするつもりだったんだよ」
まあ、コイツがどこへも行けないように持ち物取り上げたのはオレだけど…
結構普通に生活してたと思ったのになんで突然出て行ったのか、そこは疑問だった。
何か不満だったのか、まさか前の男にやっぱり未練があって…とか女々しい事考え出した脳ミソを停止させる。
分かるかそんなもん。
女の考えてる事なんてオレにはサッパリだ。
とりあえず見付かった事に満足しとかねえと。
さつきから連絡なきゃどうなってたかと考え、思わず小さく息を吐いた。

まあ何はともあれ…
「帰んぞ、家」
全力で走って急に止まれば当たり前だが、全身汗だくだ。
気持ち悪ぃ、さっさと帰って風呂だ風呂。
ふと目が合った名前は何故か驚いた顔でオレを見ていて、小さい手がゆっくり目の前に迫る。
汗が滲み出る額を、震える手が触れた。
名前の手にオレの汗が伝う。
と同時にまた泣きそうな顔になって…わけ分かんねえと思いながらもオレはコイツのこういう顔も悪くねえよなとか思った。
あーあ、予定変更だわ。
風呂の前にお前な。

「名前」
お前は気付いてないかもしれねえけど、オレは多分思ったよりお前に依存してんだろうな。
言わねえけど。

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