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今の部署には、仕事が出来て可愛くて人望も厚くて入社以来ずっと尊敬している先輩と、人当たりも人受けも良くてバスケの知識豊富で明るいムードメーカー的な存在の同期がいる。
と、その他数名のメンバーで力を合わせて仕事をしている。

今朝いつもより少し早く出社した私は、同期が自宅から持ってきたという写真で盛り上がっていた。
バスケファンの誰もが、喉から手が出るほど欲しがる写真ではないだろうか。

「高尾、突然すごいもの持ってきたね」
「え!オレ名前に言ったことなかったっけ?」
「高尾がヴォーパルソーズのメンバーだって事は勿論知ってたよ。でもこんな写真持ってたとは」
「まあオレも写真の事なんてすっかり忘れてたし?最近部屋の掃除してて見付けたんだよね〜」
「さらっと言うけどすごい事だけどね」
「あはは!なっつかしいよな〜」
「当たり前だけど皆若いね」
「もう!まだ若い女の子が何言ってるの、名前ちゃん」
「あ、先輩さん!おはようございます!」
「おはよーございまーっす!」
「おはよ、二人とも」
先輩の出社に姿勢を正して挨拶。
今朝も相変わらず可愛い。
先輩さんが担当しているチームや他のスポーツ関連の取材先は、取材がある度にさぞ癒されていることだろう。
可愛いわりに時折鋭く突っ込んでくる取材に、実はちょっと恐れられていたりもするけど。
「まあ確かに。皆若いって言うか、可愛いね」
「そうですね。それに楽しそう」
可愛いのはあなたですよ先輩、という言葉は飲み込んで、デスクに広げられた写真に再び視線を戻す。
試合後の打ち上げとか、その後やったっていう誠凛高校との試合とか、皆の楽しそうな表情に目を奪われる写真ばかりだ。
「そうそう!先輩さんと名前に頼みがあって持ってきたんだよね〜」
「頼み?」
「そ!」
そう言って高尾が取り出したのは封筒だった。
2つの封筒をそれぞれ私たちに差し出してニカッと笑う。
「先輩さんは青峰くんに、名前は黄瀬くんに。今度会った時コレ渡しといてくれません?」
「ああ、写真プリントしてあげたんだ?」
「そッス!」
なるほど。
写真の存在を忘れてたとは言え、さすが高尾だ。
こういうところがこの人のコミュニケーション能力の高さだろうなと感心しつつ封筒を受け取る。
黄瀬くん、喜ぶだろうな。
彼がものすごく喜ぶ姿が目に浮かぶ。
青峰くんは…どうかな。
そう考えて、ふと目を落とした先にあった写真に思わず微笑んでいた。
「あー、名前。何そんなニヤニヤしてんの?」
「え?」
「何?黄瀬くんの写真欲しいの?」
「え」
「よしよし、じゃあ優しい高尾くんがその1枚プレゼントしちゃう」
「え!?いいよ!」
「遠慮すんなってー。あ、でも売ったり記事にすんのはナシね」
「や、そんな事しないけど」
「ジョーダンだって!でもいくら取材先でも黄瀬くん相手は苦労すんぜー?」
「ん?」
私の視線の先にあった写真をヒョイと拾い上げて不敵に微笑む高尾に首を傾げる。
更に笑みを深めた彼は、突拍子もない発言をかましてきた。
「黄瀬くん好きんなったら大変っしょー!色々!」
「は!?」
「え!そうなの!?名前ちゃん!」
どうしてそうなった!?
高尾がぴらぴらと扇いでいる写真には、頬をつねられて半泣きの顔をしている黄瀬くんと、悪い顔で笑いながら彼の頬をつねっている犯人、青峰くんの二人が写っていた。
私がその写真に目を落としたのはたまたまで、その写真がすごく自然体で楽しそうでいいなって思ったからで…
「高尾はすぐそういうこと言う!」
「え?間違ってないっしょ?」
「間違いです。それもとんでもない」
「いやいやいや、あんな顔しといてそりゃないっしょー」
「あんなって!?」
「言わせんの!?恋する乙女!」
「やっぱそうなの!?名前ちゃん!」
…ダメだこの人たち。
私そっちのけで盛り上がり始めた二人を横目に、一人自分のデスクに移動する。
ちょうど出社してきたメンバー二人を更に追加して、始業時間までネタには全く困らなそうだ。
ニヤニヤこっち見ないで下さい!
じろりと睨んでみれば、また高尾が爆弾を投下してきた。
「安心しろって!この写真はちゃんと名前にやるから!」
「違う!」
まあこんな感じで、職場はいつも賑やかだ。







「というわけで黄瀬くん。高尾からの贈り物です」
「わ!これは本気で嬉しいッス!」
「良かった。黄瀬くん絶対喜ぶだろうなって思ってたんだよね」
「うん!高尾くんさすが!久しぶりに高尾くんに連絡しないとッスね!」
「え!連絡先知ってたの?」
「うん。そんな連絡取り合ってるわけでもないけど」
「高尾、そんな事言ってなかった」
「きっと高尾くんなら色んな人の連絡先知ってるんじゃないスかね〜」
「確かに。そうだよね」
チームの取材後、高尾から預かっているものがあると黄瀬くんに伝えたところ、もう上がりだからちょっと待っててと言われて今に至る。
完全にオフの服装になった黄瀬くんと歩きながら、事の経緯を話して写真の入った封筒を手渡した。
高尾、黄瀬くんと連絡取れるなら自分で渡せばいいのに。
考えてみればコミュ力の塊なんだから、あの当時の面子の連絡先なんて余裕で知っているはずだ。
でもそういうのを使わずに真面目に仕事してる高尾はまあ、やっぱり信頼できる仕事仲間だ。
「それで?その俺と青峰っちの因縁の写真はどうなったんスか?」
「勝手に私のデスクに飾られてます。ごめんね、黄瀬くん」
「あはは!苗字さん、なんで謝るんスか」
「いや、なんとなく申し訳なくて。絶対悪用はしないから安心して」
「そんなん全然疑ってないッスよ」
黄瀬くん天使かな。
私の謝罪を笑い飛ばして、無条件に信用してくれる黄瀬くんいい人過ぎかな。
ますます申し訳なくなってくる。
「もうホント、私が黄瀬くん好きとか高尾ホント馬鹿じゃないの?恐れ多くて言葉にしただけで申し訳なさすぎ」
「え?俺は嬉しかったッスけど」
「ひゃー!神対応ありがとうございます」
「え、フツーに」
「黄瀬選手は神様です」
「もー、今は選手いらねッスよ」
「黄瀬くんて本当に優しいよね」
「それは苗字さんでしょ?ていうか俺の事持ち上げ過ぎ」
「そんな事ないでしょ」
「いやー、俺実は悪〜い男かもしれないッスよ?」
「ないない」
「苗字さんが知らないだけで」
「ないなー」
「すーっごい腹黒かったり、」
「すごい悪い男説推してくるね!」
黄瀬くんは本当に社交的で優しい人だ。
所々に高尾に似た部分を感じつつ、同じ電車に乗って帰路に着く。
最寄り駅に着けば同じ方向に歩き始めるわけだけど、分かれ道で当たり前のように私の家の方に向かおうとする黄瀬くんを引き留めた。
「黄瀬くん、ここで大丈夫だよ」
「へ?」
「黄瀬くんの家はあっち」
「送るッスよ」
「いい!いい!悪いからホント」
「危ないし」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「んー…送りたいって言っても駄目ッスか?」
「…ん?え?」
ぽかんとする私を真っ直ぐ見て黄瀬くんが首を傾げる。
黄瀬くんファンが聞いたら卒倒しますねコレ。
破壊力あり過ぎ。
「苗字さんと話してるの楽しくて。あっという間なんスよね。話し足りないっていうか」
「あ、ありがとう」
「こちらこそ。なんで、俺のワガママって事で」
「とんでもない出来すぎくんですね」
「何言ってんスか。ほら、行こ」
近い未来、黄瀬くんの彼女になった人は間違いなく本当の幸せ者だろうな…
心底そう思いながら、今日のところは彼の優しさに甘えさせて貰う事にした。
高尾にバレたら確実にまた騒ぎ立てる案件だ。


「ただいまー」
「ねえ!名前!!今の!黄瀬涼太!?」
あー…家にも居た。
騒ぎ立てる人。
どうやら今夜も寝不足になりそうだ。

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