100万打記念シリーズ | ナノ

14歳のバレンタイン

1、2、3、4、5、…
嘘、これで6人目。
大輝のヤツ、いつからこんなモテる様になった?
大輝のクラスのドアから、貰ったチョコをニヤニヤと笑いながら周りに自慢する姿を見つめる。
さっきの子、すっごく可愛かった。
鼻の下伸ばしちゃって最低。
決めた、私大輝にチョコなんかあげない。


昼休み。
友達とお弁当を突いていると急に教室が騒がしくなった。
大輝が来たからだ。
まっすぐ私に向かって来る大輝の顔はしかめっ面だ。
そんな顔したってちっとも怖くなんてないんだから。
「おい」
「…」
「おい名前」
「なーに」
「ん」
「…ん?」
「ん」
「んって何、んって」
「はぁ!?早く寄越せ」
「何を?お弁当忘れたの?」
「お前、わざとやってんのかそれ」
「よくワカリマセーン」
「ってめ」
大輝が一歩踏み出すと、その足が机にぶつかって大きく揺れた。
その拍子に引出しから隠しておいたものが飛び出す。
しっかり見られた、最悪だ。
「お前!持ってんじゃねえか!それだ、それ!」
「!」
「寄越せよ」
「っなんで大輝にそんな事言われなきゃいけないわけ?」
「はぁ!?それオレんだろ!?」
「…残念、違いまーす」
「…は…違、う?」
「っこ、これは!違う人にあげるの!だから無理!」
「………」
「じゃ!そういう事だから!」
嘘ついた。
これは大輝にあげる為に作ったチョコ。
円形にしてバスケットボールを模して作った、大輝の為のチョコレートだ。
勢いで言ってしまった事を後悔してもすでに遅く、大輝は何も言わずに教室を出て行ってしまった。
…胸が苦しい。


授業が終わって皆それぞれ部活やら家やらに向かう。
帰宅部のはずの私は家に足が向かなくて、自然とバスケ部がいる体育館に向かってた。
バレンタインの今日はいつもよりギャラリーが多くて中の様子は見えない。
急用で先生が居ないのをいい事にチョコを抱えた女の子たちがひしめき合っていた。
って、今ここに居る私も同犯か。
暫くすると休憩に入ったらしく、部員達がぞろぞろと水飲み場にやって来た。
そこを狙って飛びつく様に女の子たちが群がる。
それを遠くからただボーっと見ているだけの私。
「…大輝…いない」
「呼んだか?」
「!?」
小さな独り言に返事が返って来た。
驚いて振り向けばすぐ傍に大輝が立っていた。
「何してんのお前」
「!」
「…なんだよ。渡す相手、バスケ部かよ」
「ち、違!くは無いけどっ」
「はぁ?」
「…」
「オレは呼んでやんねーぞ?」
「え?」
「誰に渡すのか知らねーけど。オレは呼び出すのなんか御免だからな」
「…」
両手をハーフパンツに突っ込み、そっぽを向いてそんな事を言う大輝を呆然と見つめた。
…私、知ってる。
この顔は拗ねてる時の顔だ。
もう、しょうがないな。
「呼んで来てよ」
「は?だからオレは呼ばねえって言ってんだろ」
「誰かも分からないのに?」
「ああ!呼ばねえよ!」
「ふぅん…それが青峰大輝でも?」
「誰が呼ぶかっつの!…て、…は?」
「そっか、そうなんだ。ああ、そう」
「は!?ちょっと待て!」
「残念だなぁ。凄く残念」
「待て!今のナシ!」
「そうだよね、他の子からいっぱい貰ってたみたいだし、要らないよねえ」
「はぁ!?なんでそうなんだよ!寄越せっつったろ!」
途端に焦り出す大輝を見てほくそ笑む。
私も大概性格悪いな。
だけどまだ許してあげない。
「私は自分のだけ受け取ってくれる人にしかあげたくない」
「なっ!んだそれ!つうかなんで知ってんだ!?」
「…良かったねぇ、モテモテの大輝くん」
「待て!あんなの関係ねえだろ!」
「ニヤニヤしちゃって」
「し、してねえ!だいたいお前からのがねえなら意味ねえよ!」
「…は」
「…は!!」
2人して固まった。
大輝のガングロがどんどん赤くなる。
それを見てたら私まで赤くなる羽目になった。
は、恥ずかしい。
「し、仕方ないな」
「なんだよ」
「仕方ないからっ!もう許してあげる!」
「え、偉そうに言うんじゃねえよ!クソアマ!」
「そんな事言ったってその顔じゃ全然意味ないんだから!」
「っうるせえ!ブス!」
「ぶ!…ふん!寛大な私は許した人にもう怒ったりしないもん」
「なら早く寄越せよノロマ!」
「大輝のバカ!ガングロ!アホ!ヘンタイ!好きだバカ!」
「なんッ、…ん?…は!?」
「っ好きだバカ!」
「うおっ」
チョコを投げ付けて走った。
アホ面の大輝なんか放置だ。
普通に渡したかったのに結局こんな事になっちゃうのは大輝のせいだし私のせい。
女心、ちっとも分かってない。
来年ブスとかクソアマとか言ったら今度こそあげないんだから。
好きだバカ。

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