100万打記念シリーズ | ナノ

11才の秋

大輝はイジワルだ。
いっつもいっつも私の悪口ばっか言って来る。
追いかけられたり追いかけたり、とっくみ合いのけんかになったりもする。
私、負けたくない。
負けるといつもこう言われるから。
『だっせぇ!弱いヤツ!オレ弱いヤツきらいなんだよ!』
大輝のバカ。
私だってイジワルばっかしてくるヤツはきらいだ。


大輝のパパとママも、私のパパとママもみんなはたらいてる。
だから学校から帰るとだいたい1人。
家に帰ったらまずおいてあるお菓子を食べて宿題する。
今日はあんまお腹すいてなかったから先に宿題をやった。
それでその宿題が終わるくらいに、あそび回ってた大輝がうちにやって来た。
いつもこんな感じ。
「名前!腹へった!おやつ!」
「自分んちで食べればいいじゃん」
「もう食った」
「ふーん」
「なんかあんだろ?よこせ」
「いや」
「ケチ」
「うるさい」
「クソババア」
「ババアじゃないもん」
「ブース」
「…ブスじゃないもん」
「最強ブース!」
「…」
「なんだよ、言い返して来ねえのか?」
「…」
「弱いな!オレは弱いヤツが…、」
今日の私は1日中なんかおかしいなって思ってた。
なんでかやっと分かった。
熱、出てたみたい。
顔が熱くて大輝の顔がふにゃふにゃして見える。
「おい…名前?」
「そこのおやつ食べていいよ」
「は?なんかお前おかしいぞ?」
「弱いヤツはほっとけばいいじゃん」
「やっぱ変、ってお前!あっつ!」
「…」
「熱あるじゃねーか!」
「うるさい。静かにして」
「ま、ま、待て!熱、熱だろ?あー、アレだ!デコに貼るヤツ!んで、あとはッ」
「だ、大輝?」
「う、動くな!そこに寝ろ!」
「えー、ココじゃ痛いからベッドにいく」
「ううう動くんじゃねえ!オラ!背中乗れ!」
「…え?」
大輝が私に背中をむけてしゃがんだ。
おんぶ、してくれるみたい。
体がいうこときいてくれなくてホントに辛くなってきたから、大輝のいうとおり背中につかまった。
かみの毛がほっぺにチクチク当たってくすぐったい。
超特急でベッドに運ばれて布団に入ったら、大輝はすぐにどこかにとんでいってしまった。
戻って来た大輝は私のおデコにひえピタくんをペシッと貼ってくれた。
それからベッドのわきに正座してずっと私を見てる。
こんな弱いところ、あんまり見られたくない。
「帰っていいよ」
「は!?なんでだよ!」
「1人で平気」
「っか、かわいくねえな!」
「…」
「し、死んだら困るから見てやってるだけだ!」
「…」
「っお前弱いからな!」
「弱いヤツきらいなんでしょ?だから帰っていいってば」
「ッよ、弱いからほっとけねーんだろバカか!」
「……え」
「っな!ば、バカ!ブス!ブース!!」
「…大輝きらい」
「!」
『ただいまー!名前ー?大ちゃんも居るのー?』
お母さんが帰って来たみたい。
私の『きらい』って言葉に大輝がビックリしてる。
悪口ばっか言う大輝が悪いんだから。
でも、
「き、き、きらい、だと、」
「…の、反対」
「…は?」
「ばーか」
バカでイジワルだけど、ほんとは優しい大輝のことが『きらい』の反対。

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