だー、くそ。
何やってんだよオレは。
昼休み、オレは良のクラスの辺りをうろついてた。
ここに来てどうするかなんて何も考えてやしねえ。
なんとなくクラスん中を覗いたが良もいねえ…別に用もねえけどな。
いい加減戻るかと思った所で後ろから声が掛かった。
振り返って見下ろすと女が1人。
オレに見下されても怯みもしねえ気の強そうな女だ。
「誰か呼ぶ?」
「あ?」
「誰か探してるんじゃないの?」
「は?」
「さっきからずっとこの辺にいるみたいだから」
「…なんでもねーよ」
気付かれてたらしい。
普通に話し掛けて来たソイツは更に続けた。
「誰?居れば呼んで来てあげるよ」
「あ?」
「だから、呼んであげるから…誰?」
「…居ねえみてーだからいい」
「そう?…ねえ、背高いね。バレー部?バスケ部?」
「…バスケ」
「へえ、桜井くんと一緒だ!あ、ちょっと!もしかして桜井くん?ならもうすぐ戻るよ?」
「うるせーな、もういいっつってんだよ」
「え?いいの?」
お節介な女。
しかも馴れ馴れしい。
しつこいソイツを無視して大股でその場を去る。
そのまま屋上に行ったオレは地面に寝転がった。
「ったく…マジで何しに行ってんだよオレは!行ってどーすんだっつの」
なんだかすげえむしゃくしゃして無理矢理目を瞑った。
---------------------------
「桜井くん、さっきバスケ部の人来てたよ?」
そらちゃんが桜井くんに話している内容に異常な反応を示した私は会話には加わらず聞き耳を立てていた。
「バスケ部?誰だろう」
「名前聞きそびれちゃったけど、すっごい背高くて色黒な人」
「!」
何故だかその話の続きを今聞いちゃいけない様な気がして思わず勢いよく立ち上がった。
「名前、どうしたの?」
「!や、ちょっと…トイレ」
「あはは!行って来なよ、まだ時間平気だよ」
「う、うん…行って来る」
バタバタと走り出した私の後ろで、『どんだけ我慢してたの』なんて言うそらちゃんの笑い声が聞こえた。
飛び出した理由のトイレを通過して行く当てもなくとりあえず歩いた。
『背が高くて色黒な人』
そんな人探せば当て嵌まる人はいくらだっているのに。
私の頭の中ではたった1人しか浮かばないんだ。
この桐皇にもしかしたら居るのかもしれないと思い始めた時から、私は妙な期待と不安に苛まれていた。
トボトボと歩いているうちに校舎の一番奥の階段付近まで来てしまった。
ここまで来たのは初めてだ。
昼休みはあと10分くらい。
私は階段に座って残りの時間を潰す事にした。
その頃にはそらちゃんと桜井くんのあの話題も終わってる頃だろう。
座り込んで体を丸めて外界の音を遮断する。
そうして私の脳内に現れたのは、やっぱり青峰くんだった。
帝光の時の青峰くん、かっこ良かったけどなんか可愛くて…笑った顔とかホント無邪気で。
私はそんな彼がずっと好きだった。
皆怖そうって言ってたけど話してみればやっぱりそんな事なくて。
初めて話し掛けてから毎日毎日通ったっけ。
チョコレート、なんだかんだ嫌がらずに貰ってくれたし。
今の青峰くんはどんな高校生になってるんだろう。
また背が伸びてもっとかっこ良くなってるかな。
消えずにいた私の恋心は、脳内の勝手な想像で再燃し始めていた。
prev / next