Blue Rose | ナノ

第2話

「名前、次移動教室だよ」
「うん!今行く!」
そらちゃんは私が帝光から転校してそこで初めて出来た友達。
転校したてで何も分からない私の事をずっと気に掛けてくれて、今では親友だ。
同じ高校に入れた上に同じクラスになれて凄く嬉しい。
「わ!」
「うわあッ!」
教材を持って入口で待つそらちゃんに駆け寄ろうとした時、私の不注意で誰かに接触してしまった。
「スイマセン!ぶ、ぶつかってしまってスイマセン!」
「あ」
聞き覚えのある台詞に振り返ると思った通り、桜井くんが必死で頭を下げていた。
「桜井くん!ごめん!私のせいだから」
「は!苗字さん!スイマセン!あの、大丈夫?」
「私は平気だよ。桜井くんこそ怪我とかしてない?」
「だ、大丈夫!なんか、スイマセン」
桜井良くん…そらちゃんと私と同じ中学校出身だ。
入学式でクラスの列に並んだ時に今日みたいにぶつかって謝られて…ふふ、思い出してつい笑ってしまう。
なんとなく話している内に実は同じ中学だったって事が分かってちょっと盛り上がった。
桜井くんはさっきまで部活のミーティングに参加していて、思いの外長引いて焦って戻って来た所みたい。
教室にはもう私たち3人しかいなかった。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴って慌てて移動開始。
全力疾走も虚しく、3人仲良く先生に叱られる羽目になった。

「スイマセン、2人とも…」
「いやいや、桜井くんのせいじゃないから」
「うん、私がぶつかっちゃったせいだよ」
休み時間、私たち3人は遅刻の罰として授業に使った沢山の教材や提出物を準備室に運んでいた。
もうすぐ目的地という所で、黒髪に眼鏡の男子生徒がこっちに向かって話し掛けて来た。
「桜井、授業間に合ったか?…って、その様子じゃアウトやったか」
「今吉さん!スイマセン!だ、大丈夫です!」
そういえばこの階は3年生の教室のある階だったっけ。
今吉さんというその人は桜井くんの部活の先輩らしい。
彼らの部活は…バスケ部だ。
ちょっとだけ胸がチクリとした。
「おいおい桜井、女子にこない持たしたらあかんやん」
「や、あの、すすすスイマセン!」
「先輩!これ、遅刻した罰なのでいいんです、3人でやらなきゃですから」
「ね!男子も女子も関係ありませんよ」
「3人仲良う遅刻か?ッハハ、ええよ、それワシが持ったる。貸し」
「え!大丈夫ですよ!」
「ええから…えーと、自分、名前は?」
「あ、苗字です。で、こっちが澤田です」
「ワシは3年の今吉や。よろしゅうな」
たまたま廊下で遭遇した桜井くんの先輩、今吉先輩と知り合いになった。
関西弁が新鮮で、なんだか優しそうな先輩だ。
私とそらちゃんの手元の荷物の半分以上をヒョイと持ち上げて、準備室まで一緒に運んでくれた。


下校時間になった。
そらちゃんは他校に居る彼と待ち合わせとかで猛ダッシュで帰って行った。
私はこの後バイトが入っている。
彼氏なんて……いない。
靴箱に上履きを入れていると後ろから声が掛かった。
「苗字、帰るんか?」
「あ、今吉先輩!」
今日知り合ったばかりの今吉先輩だった。
黒に臙脂のエナメルバッグを肩に下げている。
きっとこれから部活に向かう所なんだろう。
「今吉先輩、今日はありがとうございました」
「もうええって。教室行くついでやったし」
「ありがとうございます。これから部活ですか?」
「おお、これでも一応主将なんやで?」
「そうなんですね!」
「今年はめっちゃ強い1年が入って来たんやけどなかなかの問題児でなぁ…ま、その分試合で結果出してくれたらそれでええんやけど」
「部を纏めるのも大変ですよね。今年は…今吉先輩にとっては最後の1年なんですよね…頑張って下さいね」
「おおきに。ほなな、苗字」
「はい!さようなら!」
今吉先輩と別れた私はゆっくりと歩き出した。
優しくて社交的で、バスケ部を纏める主将さんか。
桜井くんが今吉先輩は凄い人だって言ってた。
決してレベルが低いわけではないこの学園でガッツリ運動部に入ってて…ホント凄いな。
ちょっと尊敬してしまう。
機会があればまたお話してみたいなと思った。

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