Blue Rose | ナノ

第20話

「おい良!」
「!あ、ああ青峰さん!」
アイツが部活を見に来た翌日。
オレは迷う事無く良のクラス、つまり名前のクラスに向かった。
名前と話してる良を見つけて呼び出す。
なんとなく目を合わせ辛くてアイツの方は見なかった。
「おい、聞いたかよ」
「はい!今聞きました!」
「…なんだって」
「昨日はバイトだったそうです」
「バイト?」
「はい。今吉さんも先生に呼び出されたような事言ってましたし」
「…そうかよ」
昨日なんで名前が途中で帰って行ったのか気になったオレは、良に明日聞いておけと言ってから帰宅した。
アイツが体育館を出た後すぐ今吉サンも出て行った。
胸糞悪かった。
その後の部活の内容なんか覚えてやしねえ。
ただイラついてさつきに文句言われて嫌んなって帰った。
「…青峰さん」
「あァ?んだよ」
「す、スイマセン!でもあのッ」
「…」
「苗字さん、笑ってました」
「は?」
「青峰さんの事を考えながら」
「…バカにしてんのかそれ」
「ち!違います!違いますよ!!」
「ああ?」
「青峰さんもそのうちきっと分かりますよ」
「はぁ!?てめえ何偉そうな事言ってんだコラ」
「は!!スイマセン!スイマセンスイマセン!」
謝りながらも珍しくオレに意見してくる良。
そのうちきっと分かる?
何が?
その答えはアイツが教えてくれんのか?
ニッコリ笑った良を睨み付けてやればまた謝って戻ってった。
…今日も部活来んのか、アイツ。
それも良に聞かせておけば良かったと少し後悔した。


「あ!青峰くん!」
「あ?」
何度か聞いた事のある女の声にゆっくり振り向く。
名前といつも居る女だ…名前なんか忘れた。
そいつはオレの威嚇に怯む事無く近くまで来た。
「青峰くん、今日部活出ないよね?」
「…はぁ?」
「だから、部活!今日はサボるんでしょ?」
「なんでそう思うんだよ」
「だって昨日出てたし、続けて出る事なんて滅多にないって聞いたから」
「…良か」
「で?どうなの?」
「そんなん知るか。そん時の気分だ」
「えー、今日は帰りなよ」
「なんでだよ」
「いいから、ね!」
「うぜえ、どっか行け」
「あー!もう、相変わらず素っ気ないね」
「…」
「あっ、名前〜ッ!」
「そらちゃん!」
「!?」
遠くに向かってアイツの名前を叫んだ女。
その大分向こうから名前の声が聞こえた。
駆け寄る足音にオレは思わずその場を後にする。
会いたくないわけじゃねえ。
なんとなく、顔を合わせ辛いだけだ。
アイツがオレを探してるとも思わなかったが、意外にも本人から声が掛かった。
「青峰くんっ」
「…なんだよ」
オレが気怠げに振り向いてすぐ、久しぶりに聞くアイツの元気のいい声が響いて…
「はい!」
「は!?ッな、!?」
チョコレートが飛んで来た。
思わぬ事態にオレは大層間抜けな面をしてたと思う。
けどアイツは構わず続けた。
「チョコ、あげる!」
「!」
懐かしいやり取りにオレの動きは完全に停止した。
込み上げて来る何かが喉元で詰まって気持ちわりぃ。
手の中にあるチョコを見てから正面を向けば、名前が笑った。
「じゃあね!」
情けない事にオレは暫くその場を動けなかった。

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