Blue Rose | ナノ

第19話

青峰くんが肩をブンブン回しながらコートの中央に向かう。
その逞しい後ろ姿を私は見つめた。
そらちゃんはついさっき帰って行った。
『もう1回惚れて来なよ』って言葉を残して。
言われるまでも無く私は青峰くんに魅入った。
かっこいい。
あの頃よりまたずっと逞しくなって背も高くなった青峰くんが、ちょっと遠い存在になってしまった気がして少しの寂しさを感じたけど。
遅らせてもらったバイトの時間まで私はずっと青峰くんを見ていた。
時折視線を感じてそちらを見れば今吉先輩が私を見ていた。
罪悪感を感じつつも今日の私は折れる事無く彼を見つめる。
多分きっと、今までこんなに彼の事を見続けた事はないだろう。
それくらい。


次の日。
学校に着くなり桜井くんが私の所にやって来た。
何故かげっそりしてる。
「桜井くん、おはよ」
「お、おはよう…あの、苗字さん」
「ん?」
「昨日はその、」
「あ、お疲れ様。見学邪魔だったかな」
「全然!全然そんな事ないんだけど、その…」
「ん?」
「な、なんで途中で帰っちゃったのかなって」
「ああ、昨日はバイトあって」
「!そ、そうだったんだ!そう」
「?どうしたの?」
何故かホッとした様子の桜井くんに首を傾げる。
真意を問いただそうとした所で廊下から桜井くんを呼ぶ声が響いた。
「おい良!」
「!あ、ああ青峰さん!」
「!」
青峰くんだった。
私を見る事なく桜井くんを呼び出した彼はすぐに姿を消した。
昨日ちょっと話せたのに…挨拶くらいしてくれたっていいのに、なんて思いながら机に突っ伏す。
ポケットに手を忍ばせると触れるのはチョコレート。
昨日のあの場で渡せるはずもなく、行き場を失ったチョコをポケットで転がした。
少しして桜井くんが溜息を吐いて戻って来た。
どうしたのかと尋ねれば疲れた笑みを向けて説明してくれた。
「昨日、苗字さん早く帰ったでしょ?」
「うん」
「その後今吉さんも用があるとかで部活抜けて…」
「?」
「その、青峰さんが…怒り出しちゃって」
「…なんで?」
「…今吉さんと苗字さんが一緒に抜け出したって」
「………は」
私はポカンとして桜井くんを見た。
桜井くんはそんな私を見て眉を下げて微笑んでいる。
「青峰さんって、可愛い所あると思う」
「…」
「言い方は怖いし態度も良くないけど、あ!スイマセン!これは言わないで!」
「っふふ、大丈夫。言わないよ」
「思い通りにいかないと不機嫌になっちゃうけど…それも結局強い意志の表れっていうか」
「うん」
「あんなに分かりやすくて単純な人、他に居ないと思うんだ」
「うん、そうかもしれないね」
「…」
「そういう曲がってるようで真っ直ぐな所、好きだったんだ」
「!」
桜井くんが驚いた顔で私を見た。
私はと言えば彼の言葉に思わず顔が綻んでいた。
桜井くんが青峰くんの事を『可愛い所がある』だなんて言うとは思わなかったけど、私には桜井くんの言ってる事が分かる。
だってずっと前からそう思ってたんだから。

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