「「おい名前」」
「っぷ」
「あーん?誰だお前は」
「ああ?お前こそ誰だよ」
中学の同級生の跡部くんと、今同じ高校に通う青峰くん。
2人が顔を合わせたのはこれが初めてだった。
予想はしていたものの、始めの台詞のシンクロぶりに思わず吹き出した。
お互いに私が紹介すると、2人とも眉間に皺を寄せたまま『ふんっ』とか『はっ』とか言うものだから笑ってしまったのは許して貰いたい。
あの日の出会いを境に跡部くんも青峰くんもお互いを敵視している。
今日は跡部くんが放課後会おうと連絡をして来たので、待たせてはまずいと急いで外に出た。
「名前、迎えに来た。帰るぞ」
桐皇の校門前にリムジンをつけた跡部くんは、私の手を引いて先に車内に促す。
今はもう慣れてしまったけれど、中学の頃は乗せて貰う度に恐縮していたっけ。
車に一歩足を踏み入れようとした時、後から大きな声が響いた。
「おい跡部!どこ連れてく気だよ!」
「あーん?…青峰か」
物凄い形相で青峰くんが走って来た。
そして乗り掛けた私の腕を掴んで引き戻す。
「その手を離せ、青峰。名前はこれから俺と出掛ける予定だ」
「あ?そんなん知るかよ!名前、帰んぞ」
2人の顔が怖い。
でも今日は元々跡部くんと約束していたから、青峰くんになんとか言って聞かせて今日の所はサヨナラして貰った。
青筋立てて帰って行く姿を車内から見つめる。
なんだか妙な罪悪感だ。
「俺様と居るのに他の男見てんじゃねえよ」
「え?あ」
ボーっとしていたら隣から伸びて来た腕に引き寄せられた。
跡部くんの綺麗な顔が私を覗き込んで来て心臓が跳ねる。
「くく。顔、赤いぜ?」
「あ、跡部くんがいきなりこんな事するから」
「こんなものでそれじゃあ、この先が思いやられるな」
「!何言ってるの!」
「あーん?」
笑いながら腕を解いて少し離れる跡部くん。
ホッと安心したのも束の間、今度は手と手が重なった。
シートに置いていた手が跡部くんのてに包み込まれる。
顔を上げると、冷たい色の綺麗な瞳が優しく私を見つめていた。
「俺はお前の事、いつまででも待てるぜ?」
ぎゅっと手を握って跡部くんが囁く。
その瞳は真剣だ。
ドキドキと心臓が煩い。
「お前がお前から俺に落ちてくるまで、ゆっくり待ってやろうじゃねえの」
「っ」
その言葉と共に頬に柔らかい感触。
それが跡部くんの唇だと理解した時には、彼はもうシートに背を預けていて…
勝ち誇った様に綺麗に笑う跡部くんの顔から、暫く目が離せなかった。
その日の夜、お風呂上がりにメールが来ていた。
跡部くんから一言、『また誘う』とあった。
なんだか、らしくて笑ってしまう。
もう1通は青峰くんで…
「あれ…」
窓の外を覗くと、暗闇にポツンと佇む人。
後姿でももう誰だか分かってしまって、プッと吹き出しつつ外に向かった。
メールはこれだけ…『外』。
「青峰くん」
「おせーよ」
「ごめん、お風呂入ってたから」
返事は無くて、いきなり正面から抱き締められる。
「あ、青峰くん?」
「んとだ…シャンプーの匂い」
「う、うん」
「…今日、跡部と何してたんだよ」
「何って…普通に買い物したり、ドライブしたり…」
「はっ。金持ちのボンボン野郎が」
「…もうちょっと仲良く出来ないかなぁ」
「あ?出来るわけねーだろ」
「んー」
「お前、アイツに何もされてねーだろうな」
言われて車内での事を思い出して頬に熱が集まる。
目の前の青峰くんの目が更に細くなった。
「…何顔赤くしてんだよ」
「!そ、そんな事ない」
「こーゆー事、されたのかよ」
「え!!」
おデコにキスが降って来た。
今日はなんて日だ。
更に赤くなった顔を隠す様に青峰くんの胸に埋める。
『あの野郎、ぶっ潰す』なんて物騒な言葉は聞こえなかった事にしたい。
翌日。
放課後の校門前には跡部くんと青峰くん。
「青峰、さっさと帰れ」
「あ?うるせーよ。お前こそ帰れっつの」
「口の悪い単細胞が」
「金に物言わせるボンボンが」
「あーん?」
「んだよ」
「ちょっと!こんな所で騒ぎ起こさないで!帰ろう!一緒に!」
「誰がこんな単細胞と」
「こっちの台詞だバァカ!この成金野郎」
「もういいから!帰るよ」
「お、おい!」
「うお!」
言い合いばかりしてる2人の腕を引いて歩き出す。
跡部くんの運転手さんに歩いて帰りますと伝えた。
両サイドには不機嫌丸出しの男の子が2人。
なんだか笑えて来て吹き出してしまった。
「何笑ってんだよ」
「何がおかしい」
「…っあはは!」
2人同時に出た言葉にまた笑う。
私が笑い続けていれば、2人も釣られた様に笑みが零れた。
もうすぐ日が暮れそうな道を3人で歩く。
「今日だけだ、名前」
「ったく、二度とごめんだな」
そんな2人の愚痴を耳にしながら。
END
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蓮様
お楽しみいただけましたでしょうか?
青峰くんと跡部くんが同じ世界の人間だったら。
面白い設定ありがとうございました(笑)
上手く描けていたらいいのですが。
リクありがとうございました!
泪
20140123
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