「あ、やっぱりここに居た」
屋上の重い扉をそっと開けると、仰向けで寝転がる大好きな人を発見。
物音を立てない様に、そっとそーっと距離を縮める。
その顔を覗き込めば全く起きる様子はなくて、彼のすぐ横に静かに腰を下ろした。
両手を頭の後ろで組んでそれを枕に、くかーくかーと気持ち良さそうに眠っている。
あどけない表情が可愛い。
可愛いって言うと頭グリグリされるから言えないけど。
「ふふ」
思わず漏れてしまった笑いに、彼…青峰くんの腕がピクリと動く。
起こしちゃったかもしれない。
「っん…」
「…」
「…名前?」
「うん。おはよ」
「まだねみーんだけど」
「あはは。寝過ぎだよ」
「名前…ん」
「ん?」
青峰くんは寝転がったまま両手を広げて私を見る。
首を傾げれば突然腕を掴まれてグイと引っ張られて…
「っわ!」
そのまま青峰くんの腕枕にすっぽりと納まってしまった。
すぐ目の前には青峰くんの顔。
ボッと音がする勢いで顔が熱くなる。
「ぶは!顔、ゆでダコみてぇ」
「わっ私は寝ないからっ」
「っぶ!いって」
青峰くんの顔に掌を押し当てて起き上がった。
真っ赤になっているであろう顔に両手を当てて背を向ける。
いくら屋上とは言え、誰かに見られてるかもしれない場所で一緒に寝転がるなんて恥ずかし過ぎる。
なんてドキドキしながら考えていると、隣で青峰くんが動く気配がした。
と同時に
「これならいーだろ?」
「!」
座る私を後ろからふわりと包み込んだ。
青峰くんの匂いに包まれる。
抱き締め方がいつもの強引な感じじゃなくて、思いの外優しくて余計にドキドキする。
「んー、抱き心地サイコ―だな」
「えっ!ちょ、と…」
「もうちょい寝さして」
「ええ!?」
熱くなった私の頬に顔を寄せて、青峰くんは寝る体勢に入る。
座ったまま寝るの!?
驚いている間に、徐々に背中に重みが掛かって来る。
それに合わせて規則的な寝息までも聞こえて来た。
安心して寝てくれたのだと思えば聞こえはいいけど。
私はこんなにドキドキしてるっていうのに、この人は眠いからってこんな簡単に寝れちゃうんだなと思って微妙な気持ちにもなる。
それは贅沢かもしれないけど。
暫く経っても起きる気配がない。
私もいい加減落ち着いたし、青峰くんの体温に包まれてだんだんと眠くなって来た。
すぐ横にある青峰くんの頭にコツンと自分の頭を合わせた。
そのまま目を閉じて、青峰くんの呼吸に誘われていつの間にか眠りに落ちていた。
バタン!
「!!」
「んあ?」
扉が閉まる音で目が覚めると、大変な事態になっていた。
「あーっ!!青峰っち何してんスか!!」
「なっ、何をしているのだよ!!」
「いいなー、俺もアレやりたーい」
「青峰くん、女性に圧し掛かって寝るなんて…なんて事してるんですか」
「苗字さん、大丈夫?重かっただろう?」
振り向いた先に居たのはバスケ部の皆だった。
体の前で組まれた青峰くんの腕をバシバシと叩くと、耳元で笑い声が響いた。
「っはは!いーだろお前ら!」
「なっ」
弛めて欲しいと言う意味で叩いた腕は、さっきよりも強く私を抱き締めている。
逆効果!
どうやら休み時間に屋上でミーティングの予定だったらしく、いつの間にか皆は円になって腰を落ち着けていた。
立ち上がろうとした私は青峰くんに捕まったままミーティングに混ざっている。
『キミが居なくなると煩いしやる気もなくなるから、ちょっと我慢してくれるか?』
と赤司くんに言われて、未だに青峰くんの腕の中というわけだ。
恥ずかし過ぎる。
特に長引く事もなくミーティングは終わり、皆それぞれ立ち上がって歩き出した。
やっと私も解放された。
何事も無かったかのようにドアに向かう青峰くんの背中を小走りで追う。
「えっ、ぶ!」
突然立ち止まった青峰くんに、そのまま激突してしまった。
いきなり止まるなんて酷い。
だけど青峰くんの背中、あったかくていい匂い。
ずっと陽に当たっていたからかポカポカしていた。
そんな事を考えながらボーっとしていれば、青峰くんが顔だけ私に振り返る。
そして
「また昼寝しような」
屈託のない笑顔で言うものだから、私は顔を赤くして頷くしか無かったんだ。
END
----------------------------------
星麻様
お楽しみいただけましたでしょうか?
青峰で屋上で抱き締められお昼寝という事で、青峰くん寝てばかりでしたが(笑)
ご希望の感じで無かったらすみません!
リクありがとうございました!
泪
20140119
prev / next