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2人と私とおまじない



「だー!無理!もうやめだ、やめ」
「…青峰っち、やる気ないなら帰って下さいッス」
「やだね。俺寝るからテキトーにやってろよ」
今、青峰くん涼ちゃん私の3人でテスト勉強をしている。
って言っても今さっき青峰くんが離脱しちゃったけど。
あ、凄い。
本当にもう寝てる。
ここは涼ちゃんの部屋で、ちなみに涼ちゃんは私の幼馴染。
家がお隣で小さい頃から兄妹みたいに育って来た。
2人ともテストが危機的状況で、なんとかしないとバスケ部の赤司くんにどうにかされてしまうとか言って震えていたから、私が勉強を教える事になったのだ。
私の向かい側に2人が並んで座る形で陣取って、まるで先生にでもなった気分で勉強を教える。
「ふぅ…青峰っち、何しに来たんスかマジで」
「あはは。青峰くんにしては保った方なんじゃない?」
「まあ、そうかもしれないッスけど」
涼ちゃんは大きな溜息をつきながら、隣で寝転がる青峰くんを見下ろした。
始めは集中していたけれど、まずスイッチが切れたのが青峰くんだ。
涼ちゃんもなんとかやっているけど、ちょっと疲れて来たみたい。
「涼ちゃんも少し休む?」
「んー。名前が癒してくれるんスか?」
「…」
ふわりと微笑みながらそんな事を言うものだからドキドキして、私の頬は熱くなった。
そんな私を見て涼ちゃんはまた微笑んで『可愛いッス』なんて言う。
不意に涼ちゃんの大きな手がこっちに伸びて来て顔に向かって来るから、思わず目を閉じるとクスクスという笑いが零れた。
そっと目を開けるのと同時に、頬にその手が触れる。
目が合えば思いの外真剣な顔をしていて心臓が高鳴った。
「…涼ちゃん?」
「名前は誰にも渡さねぇッスよ」
「っ!」
「他の男にも、勿論青峰っちにも」
「…」
「俺はずっとずっと近くで名前を見て来たんスから」
頬を撫でる手は凄く優しくて、それは小さい頃から変わらないはずなのに…彼の目は昔とは違うんだと言わんばかりに鋭く光っている。
どうしたらいいものかと戸惑っているとゆっくりと手が離れて行き、ホッとしたのも束の間。
「!!」
「男除けのおまじないッス」
おデコにちゅっとキスされた。
更に頬を赤らめて茫然としていると、涼ちゃんは立ち上がってまた微笑む。
「飲み物と何かおやつ持って来るッス。ゆっくりしてて」
「う、ん」
ポンポンと私の頭に優しく触れて部屋を出て行った。
思わず息を吐く。
ドキドキした。
涼ちゃんは優しくてかっこよくて何でも出来て、大切な大切な私の幼馴染だ。
ずっと一緒に居たからそれが当たり前で、自分が彼をどう思ってるとかそんなの考えた事も無かった。
なのに最近はさっきみたいな事が増えて、私はその度にドキドキしてどうしたらいいか分からなくなる。

『どうしたらいいか』
それはそこで寝ている青峰くんにも言える事だった。
もう一度軽く息を吐くと、まさかの声が上がる。
「名前」
「!あ、青峰くん!?」
ぐっすり寝ていると思っていた青峰くんが、むくりと起き上がった。
そして勢いよく立ち上がると、私の隣に腰を下ろす。
やっと落ち着いた心臓がまた慌て出した。
「なんだよ、男除けのおまじないって…バカじゃねーのアイツ」
「あ、青峰くん起きてたの?」
「人が気持ち良く寝てんのにイチャつき出したから目が覚めちまったんだよ」
「イチャついてなんかっ」
「寝直さねーとな」
「え?」
そう言うが早いか、青峰くんは私の腿に頭を乗せてごろんと仰向けに転がった。
驚いて無意識に手が上がってしまったのだけど、青峰くんは私のその手をいとも簡単に掴んで握り締めた。
下を向けばすぐ近くに悪戯っぽく笑う青峰くんの顔。
「んー、寝心地最高」
「ちょ!青峰くんっ」
「いーじゃん。暴れんなよ?」
「!」
上目遣いで見つめた後、私の制服のリボンをギュっと掴んで引っ張った。
勿論私はその力に抗う事なんて出来なくて、そのまま青峰くんに向かって引っ張られて…
「黄瀬の男除けのおまじない、効かねーな」
「っ」
「ま、俺限定だけど」
耳元で低く囁かれて…
「なら今度は、お前が俺しか見れなくなるっておまじない」
そう言って耳にキスされた。
バッと顔を離して耳に手をやり、頭から爪先まで沸騰したように熱くなった所で涼ちゃんが戻って来た。
「ちょ!青峰っち何してんスか!!」
「何って…昼寝だ昼寝」
「なんで名前の足に頭乗っけて!?はぁ!?」
「うるせーよ黄瀬!眠れねーだろ」
「そこで寝ちゃ駄目ッス!てか名前なんで顔真っ赤なんスか!!」
「え、え…ええ!?」
混乱する私と騒ぎ立てる涼ちゃんを尻目に、飄々と眠りにつこうとする青峰くん。
私は動転して思いっきり立ち上がり、青峰くんの頭をゴロンと床に落としてしまった。
それを見て、さっきまで怒っていた涼ちゃんが吹き出す。
「ぶっ!あはは!!」
「いってぇ」
「青峰くんごめんっ」
「いい気味ッス!」
「黄瀬ー、お前笑ってんなよコラ」
「自業自得ッスよ!」
「なんだとてめー」
「青峰っちこそっ!」
「ふ、2人とも喧嘩は駄目!」
「誰がこんな弱っちいヤツと喧嘩なんかするかよ」
「なっ!青峰っちどういう意味ッスか!」
「あ?文句あんならバスケで俺に勝ってみろっての、無理だけどー」
「あー!あったま来た!今からストバス行くッス!」
「おー、望むところだぜ」
「ええ!?ちょっと2人とも勉強は!?」
「「コイツを叩くのが先!!」」
「!っぷ、…もう」
肩をぶつけて威嚇し合いながらストバスに向かう2人を追い掛ける。
無駄にドキドキして壊れかけた心臓に触れてホッと息を吐いた。
まだまだ『恋』や『愛』だなんてものに未熟過ぎたこの頃の私は、暫く2人からの愛情攻撃に悩まされる事になるなんて知る由もない。



END









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HΛL.様へ
お楽しみいただけましたでしょうか?
帝光時代の青峰くん黄瀬くんに愛され設定という事で、
力不足で思ったより甘くならずに…
ご希望の感じでなかったらすみません。
リクありがとうございました!

20140119



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