10万打リク | ナノ

居場所



「名前っち!今日部活見に来てくれるんスよね?」
「うん」
「よっしゃ!俺頑張るから!応援して欲しいッス!」
「おい名前、黄瀬の応援とかすんじゃねーぞ」
「青峰くん」
「なんスか!青峰っちには関係ねえッスよ!」
「バァカ、大有りなんだよ…」
「2人とも頑張ってね、応援してる!」
「うぅ…俺だけの為の応援が…いでっ!ちょ!なんで蹴るんスか!」
「応援なんかされなくても自力でかかって来いボケ」
「勿論今日も勝ちに行くッスよ!」
「おー、やれるもんならな」
ニッと笑い合う青峰くんと黄瀬くんを見て私も笑顔になる。
この2人はいつもいつも、バスケでやり合うか言い合いしてるかそんな所しか見てない気がする。
だけど私は、時には楽しそうに時には真剣に毎日切磋琢磨しているようなそんな2人が大好きだ。


2人と知り合ったのは体育館。
その日の放課後遅く、私は1人で友達を探し回っていた。
緑間くんの事が大好きなその友達は毎日バスケ部見学に行っている。
いつも一緒に行こうって誘われるんだけど、正直興味のない私は断り続けていた。
今日は私が帰りが遅くなると知って、なら一緒に帰ろうと声を掛けられたのだ。
「居ない…」
約束の場所である玄関でいくら待っても来ない、メールも電話も通じない…そんな状態だったので仕方なく体育館に向かった。
体育館には明かりが点いていて、ダンダンというボールを突く音が聞こえた。
まだ残って練習してる人が居るんだ。
もしかしたら緑間くんが居て、友達もまだ応援しているのかもしれない。
とりあえず中を覗いて見る事にした。
ガラガラ…
重たいドアを開けた瞬間、体育館の中に大きな声が響いた。
「危ねぇっ!」
「ああっ!」
「え?」
バシッ!バン!!
「ぶっ」
「げ!!」
「うわぁあ!!」
目下でバウンドしたボールがふわっと私の目の前に迫って、『やばい』と思った時にはそのボールと顔面でご挨拶していた。
ふわって柔らかい感じで来たからって相手はバスケットボール。
うん、凄く凄く痛かった。
でも倒れて気を失うとか可愛らしい事なんて起こらなくて、あまりの痛さに悶絶して蹲って顔を覆うだけ。
「大丈夫ッスか!?」
「お、おい…」
「い、痛い」
数人が駆け寄る音が聞こえてむくりと顔を上げた。
あ、この人たち知ってる…青峰くんと黄瀬くんだ。
そんな事をぼんやりと思っていると、
つぅ…
「あ、…ぷ」
「ぶはっ!!」
「…」
最悪だ…鼻血垂れた。
しかもこの人たち、今笑った!!
私は鼻を押さえて抗議した。
「酷い!すっごい痛いんだから!!」
生理的に流れた涙と残念過ぎる鼻血をぐいっと拭って大声を張り上げると、目の前の2人は目を見開いて固まった。
「ごめんなさいッス…」
「わりぃ…いてーよな、そりゃ」
そして2人は揃って距離を縮めて…
黄瀬くんは指で涙を拭ってくれて、青峰くんはTシャツの裾を掴んで私の鼻血をゴシゴシと拭いてくれた。
あ、Tシャツ汚れちゃった。
「お前、名前は?」
「…苗字、名前」
「帰り!送るッス!!」
「おー、そうだな」
「え!いいよそんな!1人で帰れる!」
「「…」」
「え?なんで無言?」
これが、私と2人との出会い。


青峰くんと黄瀬くんと私は3人で帰り道を歩いている。
これからアイスを買いにコンビニに寄るところ。
出会った時の話題になっていた。
「あの時は驚いたッス」
「まあな」
「…」
「普通の子だったらすんなり送られる所ッスからねー」
「鼻血垂らして1人で帰れるとか。つかマジでキレ―に垂れたよな、あれ」
「う、…っぷくく」
「青峰くん酷い、黄瀬くんも酷い」
「名前っちごめん!でも俺あの時からっ」
「おい黄瀬」
「…なんスか、青峰っち」
「もうコンビニ着くぞ。アイス買って来いよ」
「…分かってるッスよ」
黄瀬くんは今日も青峰くんに負けてしまって、アイスを奢る事になっていた。
膨れながら1人店内に入っていく。
「名前」
「ん?」
「お前さ、俺と黄瀬…どっちがいい?」
「…え?」
「んだよ、その間抜け面」
「ど、どっちがいいって…」
「そのまんまの意味だろ」
「そんな事言われても」
「いい加減気付いてんだろ?」
「っ」
ドキドキと心臓が煩い。
あまりに真剣な顔で聞かれて戸惑っていると、アイスを買い終えた黄瀬くんが戻って来た。
「名前っち!はい!」
「あ、ありがとう」
「…おい黄瀬!俺のは!」
「…はーいッス」
「なんだよその嫌そうな面は!お前が負けたからだろ?」
「悔しいだけッス!!」
「っはは!ま、お前が俺に勝つなんてこれからも有り得ねーけどな」
「なっ!そんな事ねぇッスよ!」
「言っとけバァカ」
「っふふ」
「…名前っち?」
「何笑ってんだよ」
「なんかいいなって思って」
「何がッスか?」
「2人の関係」
「…気持ちわりー事言うなよ」
「2人って…3人の間違いッスよ、名前っち」
「え?」
「ま、そーだな。黄瀬は邪魔だけど…こういうのも悪くはねーよな」
「邪魔!?」
「私、青峰くんも黄瀬くんも好きだよ」
「「!?」」
「ずっと仲良しでいてね」
「!そんなの言われるまでもねぇッスよ!!」
「…黄瀬もってのが気に入らねーけど」
「ふふ」
ずっと今のままが居心地がいいなんて…
難しいと分かっていながらも思ってしまう。
だって私は、ぶっきら棒な青峰くんも人懐っこい黄瀬くんも大好き。
どうかもう少しだけ、この心地いい場所に居させて下さい。


END











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時雨様
お楽しみいただけましたでしょうか?
青峰くん黄瀬くん2人の気持ちを知りながらどちらも選べない主人公。
こんな感じになりました。
甘さが足りなかったらすみません><
リクありがとうございました!

20140117



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