10万打リク | ナノ

ダークブルー



彼の色黒の肌が好きだ。
彼の鋭い藍の瞳が好きだ。
彼のダークブルーの髪が好きだ。
この体全部、大好きな彼と同じ色に染まってしまえばいいのに。


「大輝、明日お祭りだからね」
「あ?そうだったか?」
「酷い!忘れたの?6時に神社の前で待ち合わせね」
「…めんどくせー」
「約束だよ!」
この調子じゃ来てくれないかもしれないと、1時間前から催促の電話してやろうと決めた。

お祭りの日。
藍の浴衣に紅い帯、アップにした髪には鮮やかな青い花、足には彼の髪と同じダークブルーのネイル。
大好きな人の色に包まれてる。
気付いて欲しいな、なんて思ったりして。
だけどそんな彼は1時間前から何回も電話したのに出ないし、案の定約束の時間になっても来ない。
更に最悪な事に、私の携帯はバッテリー切れ。
連絡を取る手段も無くなった。
周りを見渡すと、浴衣姿のカップルで溢れている。
1時間待った。
私ってばなんて健気。
一人ぼっちでナンパもされなければ知り合いにすら会わなかった。
現実的でしょ?
足元の小石を蹴飛ばして、諦めて帰る事にした。
暗い夜道をカランコロンと下駄を鳴らして歩けば、余計に1人を実感して虚しくなるだけだった。
夜空を見上げたら、真っ黒なはずの空はお月様の明かりのお蔭で奇しくも彼と同じ色を宿している。
綺麗な暗い青だな…
「名前?」
「!大輝!?」
見上げていた顔を下げたら、少し先に大輝が立っていた。
さっきまでの虚しさはバカみたいに吹き飛んで、彼の元に駆け寄る。
「わりぃ、寝てた」
「…いいよ。来ようとしてくれたんでしょ?」
「おー」
私はなんて単純なんだろうって思う。
「祭り、行かねーの?」
「ん。いい」
「浴衣着てんのに…って俺が言うなよな」
「あはは!…浴衣、どうかな?」
「ん?いーんじゃね?」
「そ、そう」
「つうかお前、青とか男っぽい色好きだよな」
「…うん」
男っぽい色って…
全部大輝の色なのに、やっぱり何にも分かってない。
期待はしてなかったけどガッカリ。
「青が大好きなの」
「ふーん」
「好き過ぎて困るくらい」
「なんだそりゃ」
「って言っても分かんないよねー」
「何が?」
「何でもないよ」
「んだよ…じゃ行くか」
「うん」
鈍感な大輝が気付くはずもない。
促されて歩き出そうとした所で、私は足の異変に気付いた。
「い、いた…」
「あ?」
慣れない下駄なんか履いたせいで指の間が赤くなってしまっていた。
散々だな。
「足痛いのかよ」
「うー…うん」
「仕方ねーな、見せてみろ」
「え」
「ほら、肩に手置け」
大輝は私の前にしゃがんで足に触れた。
下駄を脱がせて少し持ち上げられたのでよろけて大輝の肩を掴むと、不機嫌そうな大輝の声が響いた。
「これ歩けんのか?ったく…慣れないもん履くからだろ」
「…浴衣、着たかったんだもん。もう意味ないけど」
「…」
「も、もう平気だから帰る」
「名前」
「え?」
いきなり大輝が私に背を向けたと思ったら、そのまま後ろ手に掴まれてひょいと背中におぶられた。
突然の事でビックリして声も出ない。
「帰んぞ」
「!」
よっと、なんて言いながら私を負ぶい直して歩き出した大輝。
平気な顔してるけどこっちは恥ずかしくて仕方ない。
浴衣の前は足が開いて完全に崩れちゃってるし、体は大輝にぴったりくっついてるし。
隣を見れば、大輝の横顔がすぐ近くにある。
ドキドキと心臓が煩い。
おんぶされている事でぶらんぶらんとぶら下がって揺れている私の足を見ながら、大輝がポツリと言った。
「また青…」
やっとペディキュアの色に気付いてくれたみたい。
「うん、青」
「…」
「…言ったでしょ?青が大好きなの」
「どんだけだよ」
「?なんで大輝が不機嫌になってるの?」
変な大輝。
チッと舌打ちをして不機嫌全開だ。
何処に怒る要素があったのか。

その疑問はすぐに解けた。
「…大好き大好きって、それたまには俺にも言えっての」
「!」
「色じゃなくて、俺にもそういう事言えって言ってんの」
「だ、大輝」

大輝の色だからこんなに沢山使ってるなんて事やっぱり結局気付いてくれなかったけど、ちょっと可愛い大輝が見られたから良しとする。
大好きな彼の、大好きな青い髪に頬を摺り寄せて笑った。
照れ隠しにする舌打ちなんかちっとも怖くなんかなくて、大輝の体に回した腕に力を込めて目一杯抱き締めた。


END











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ぽん酢様
お楽しみいただけましたでしょうか?
青峰で、髪の色と同じペディキュアを塗ったヒロイン。
どんなお話にしようか迷いました(笑)
季節外れなお話ですいません(汗)
お気に召していただければ幸いです。
リクありがとうございました!

20140131



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