10万打リク | ナノ

どんなキミも



「名前。こっちへ来るのだよ」
「ん?何?」
呼ばれて素直に緑間くんの所に行けば、いきなり髪に触れられた。
スキンシップの少ない緑間くんがこんな事をするのは珍しくて、思わずビクッと大袈裟に反応してしまう。
「!い、嫌だったか?」
「っ違う違う!驚いただけだよ」
「そ、そうか…」
ホッとしたのかふぅと息を吐いた。
緑間くんがこういう事をしてくる時はたいていある人物が絡んでいる。
「高尾くん?」
「!高尾がなんなのだよ!」
「また何か言われたの?」
もごもごと口籠っている辺り、どうやら正解みたいだ。
今日はなんて言われたんだろう。
「…名前の髪に触れた事があるかと聞かれた」
「私の髪?」
「高尾のヤツっ!」
話によると、高尾くんが緑間くんに『俺は名前ちゃんの髪結ってあげた事あるからね〜』なんて言ってきたらしい。
確かに高尾くんに髪を弄って貰った事はある。
彼器用だし。
だけど、それは緑間くんと一緒に帰るのにちょっとでも可愛くしたいなと思って高尾くんに髪を直して貰ったのだ。
そんな乙女心を彼が分かるはずも無く、高尾くんに妙な嫉妬を抱いてる。
そういう所も好きなのだけど。
対抗心を抱くなというわけでは無いけれど、私は緑間くんに高尾くんの事を比較対象にして欲しくない。
どうせ触れるなら、ただ素直に私に『触れたい』と思って触れて欲しいのだ。
これは我儘な事だろうか。
初めてのキスだって…


『緑間くん、あとどれくらい?』
『一言コメントを書いて終わりだ』
『了解』
日直日誌を書いている彼の隣で、私は大人しく座って待っていた。
コメントをなんて書くのか気になった私は、横からズイっと覗き込む。
彼は邪魔だとばかりにちょっと嫌な顔をした。
『もうすぐ終わるのだから待っているのだよ』
『分かってますよ』
『全く、大人しくしていっ!?』
『!!』
パキッと音がしたと思ったら、突然目に異物感。
彼のシャープペンの芯が折れたらしく、それが上手い事私の目に命中してしまった。
『名前!だ、大丈夫か!』
『んん、目に何か居る』
『い、今取る!見せてみろ』
『え!自分でやるよ』
『いいからこっちを!っ!?』
『っえ、んっ…』
勢いよく顔を上げた先にはどアップの緑間くんの顔があって、気付いた時にはお互いの唇が触れ合っていた。
『と、トイレで…取って来る』
『…あ、ああ』

あれって、ファーストキスって言うのかな。
あの時の事を思い出して赤面しつつ大きな溜息をつくと、緑間くんが不安げな顔を向けて来た。
「…名前」
「どうかした?」
「俺と居ても、つまらないか?」
「!なんでそんな事言うの?」
「俺は高尾の様に器用でも無ければ気も利かないし、女の事も何も分からない。物足りないのではないかと」
「私は緑間くんがいいんだよ」
「っ!」
思わず言ってしまった。
恥ずかしいけど後悔はしてない、ホントの事だ。
「高尾くんの事なんて考えてない。緑間くんがいいの」
「名前…」
緑間くんの瞳が揺らいだ。
「厳しいけど優しい緑間くんが好き。バスケに一生懸命な緑間くんが好き。なんだかんだで高尾くんを、仲間を大切に思ってる緑間くんが」
「っ」
言い終える前に抱き締められた。
どうしよう、凄く嬉しい。
ぎこちなく私を包み込むその腕は少し震えていて、緊張が伝わって来る。
「情けないな、俺は」
「?」
「俺の方が…お前の事しか考えていないのだよ」
「!」
「いつも考えている。声を聞きたいと、近付きたいと、手に触れたいと、その髪に触れたいと…こんな風に腕の中に閉じ込めたいと」
「み、緑間くん」
「どうすればいいか分からないのだよ。こんな事は初めてだ。俺の思いで…お前を壊してしまいそうなのだよ」
ぎゅっと強く抱き締められた後、少しだけ体を離される。
視界には真剣な表情の緑間くんが映った。
ドキドキと心臓が煩くて他の音が掻き消えてしまいそう。
「…こんな事ばかり考えている俺は、嫌いか?」
首を少しだけ傾けながら不安げに尋ねて来る緑間くん。
こんなの可愛過ぎてズルイ。
「どんな緑間くんも、私は大好きだよ」
揺れる瞳を真っ直ぐに見つめて伝えれば、ふっと表情が和らいで…
ゆっくりゆっくりその距離が縮まる。
そっと目を閉じて、緑間くんを受け止めた。


「もう遠慮はしないのだよ」
「ふふ。私もしないよ?」


END











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綾様
お楽しみいただけましたでしょうか?
緑間で甘、という事でこんな感じになりました。
キャラ迷子になっていないといいのですが、大丈夫でしょうか(汗)
お気に召していただければ幸いです。
リクありがとうございました!

20140131



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