10万打リク | ナノ

彼と私の幸福論



「大輝」
「あ?」
「…邪魔」
「そうか?」
「うん、凄く」
「気にすんなって」
「気になります」
大輝と生活し始めて数日。
所謂新婚ほやほやというやつ。
夕飯の準備をしている私のすぐ後ろにぴったりとくっついて離れない大輝。
刃物や火を使っている時はさすがに触れてはこないけど、正直凄く『お邪魔』だ。
お鍋に蓋をしてふぅと一息つく。
手を洗ってタオルでパンパンと拭き取ると、待ってましたとばかりにお腹に手が回った。
「腹減った」
「もうちょっとだから待ってて」
「ん」
「…重い」
「いいじゃん」
「大輝は体大きいんだから」
「…もうちょい新婚っぽい事しよーぜ?」
「新婚っぽい事って?」
「例えばよ…」
体が離れたと思ったらぐっと肩を掴まれ、振り向かされた。
腰がシンクの縁に当たり、大輝の両手が私の逃げ道を塞いだ。
視線を上げればニヤリと笑う大輝と目が合う。
なんだか嫌な予感しかしない。
「ふふん」
「ちょ、何?その笑い」
「いい眺めだな」
「な、何が」
「よくあんだろ?こういうヤツ」
「…何の話してんの、このスケベ」
「それだけで分かるお前もどうかと思うけど?」
「誰のせいだ、誰の」
「AV女優になってみっか?」
「遠慮しておきます」
「ま、とりあえず」
「っん」
上から覆い被さる様にしてキスが降って来た。
とりあえずって割には長い。
苦しくなって両肩を押し返そうとしたら、余計に強く抱き寄せられるだけだった。
ピンポン
来客を知らせるベルが鳴る。
ふと唇が離れて、大輝の眉が苛立たしげに顰められた。
弛んだ腕から逃れる様にして玄関に向かえば、そこに居たのは黒子くんだった。
結婚式の写真を持って来てくれたらしい。
「んだよ、テツか」
「お邪魔してしまったようで、すみません」
「ったくだぜ、いいとこだったのによ」
「大輝!」
後から圧し掛かって来て失礼な事を言う大輝を叱るけど、本人は何処吹く風だ。
部屋に促そうとしたら、黒子くんは用があるので帰りますと言った。
明らかに遠慮してる、大輝のせいで。
「名前さん。青峰くんの相手は大変だと思いますが…頑張って下さい」
「あ、ありがとう」
心底憐れんでいるという様な視線を向けて来る黒子くんに引き攣り笑いを返した。
写真を私が受け取ると、早々に黒子くんは帰って行った。
後でしっかり御礼しなきゃ。
ガチャリと玄関の鍵の閉まる音が響くのと同時、もう一度後から強く抱き締められる。
「もう。色々手伝ってくれた黒子くんに失礼だよ」
「…分かってるって」
「どうだかなぁー」
背中の巨体をズルズル引き摺りながらリビングのソファに辿り着いた。
そのままボフンとソファに腰を下ろせば、大輝の腕が私を包み込んだ。
耳元に唇を寄せて来るのを上手く躱しながら、黒子くんが持って来てくれたアルバムを開く。
「ほら、写真見よ」
「後でいーだろ、んなもん」
「あ、酷い。大輝にとってはそんな物、なんだ」
「…はぁ。見りゃいいんだろ」
大輝は渋々と言った感じで、私の肩に顎を乗せてアルバムを覗き込んで来た。
そこには幸せいっぱいの顔で笑う私と、ニッと口元を吊り上げている大輝。
あの時の事を思い出して、思わず笑顔になった。
「楽しかったなぁ、結婚式」
「おー」
「凄い幸せだった」
「なんだよ、今更」
「だって、ホントの事だもん」
感慨に浸っている私とは逆に、大輝は今更と冷めた事を言う。
これが男と女の違いなのかなぁ。
そんな風に思っていると、回された腕に力が入った。
「式も悪くなかったけどよ」
「うん」
「今の方がもっと幸せ、ってヤツなんじゃねーの?」
「…」
「過去はもう底辺だろ」
「え」
「これからも上がってくしかねーだろ、俺ら」
「っ大輝」
勢いよく振り向けば、大好きな笑顔で私を見下ろす大輝。
ゴツっとおデコがぶつかって、鼻と鼻もくっついた。
なんだか嬉しくて笑いを零せば、おデコをグリグリと擦り付けられる。
「っふふ、痛い」
「うるせ」
「結婚式も底辺かぁ」
「お前のウェディングドレス姿も悪くなかったけどな」
「…そこは素直に綺麗だって言って」
「ドレス、なぁ。…なんならもう1回着て花嫁プレイでもすっか」
「ばかスケベ変態」
「おう。その変態がよ、骨の髄まで愛し抜いてやるから…覚悟しとけよ」
そう言って顔を傾けてそっと優しいキスなんかしてくるから、ホント性質が悪い。
「もう。何それ恥ずかしい」
不覚にも赤くなった顔を隠す様に、大輝の大きな胸に顔を埋めた。


END











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虹子様
お楽しみいただけましたでしょうか?
青峰結婚パロという事で、甘えん坊というか変態というか終始青峰節炸裂な感じのお話になりました(笑)
ご希望の感じでなかったらとちょっと不安ですが。
お気に召していただければ幸いです。
リクありがとうございました!

20140131



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