「よォ、人間」
「!!!」
「お前、俺が見えんのかよ」
「!?」
「おぃコラ、聞こえてんだろ!さっき見てたよなァ?」
「………」
は、話し掛けられた。
しかも口悪い怖い。
チンピラか!
いやいや、んな事考えてる暇ない!
えぇい!逃げるが勝ッ
ってえぇぇえッ!?
空色の幻から逃げた、いや逃げたつもりだった私は、どうやら捕獲されたようです。
「おい、人間」
「…人間ですけど、名前は名前です」
「あァ?誰もてめぇの名前なんざ聞いてねぇよ」
「すいません、申し訳ありません、ですから下ろしてくださいお願いします。」
切実に。
だってここ空!
さっきまで地に足しっかり着いてたのに、今、空!空中!
しかも、何故か肩に担がれてる私。
何この状況。
「ハッ、下りてぇのか。じゃ下ろしてやろうか、今ここでよォ」
ニヤリ。
うああ、まただ、この表情。
かっこいいな。
って違う!!
「ちょ!ままま待って!今ここで下ろすというか落とすのはやめてくださいぃッ!!!」
「バッ、てめぇ暴れんじゃねぇ!つかしがみついてんじゃねぇ!」
「ぜぜぜ絶対離さないんだから!私まだ死にたくない!こんなの意味分かんない!!なんでこんな事なってんの!完全に不可抗力!私何も悪くない!ハッ!いや分かったかも!あんた死神!?死神なの!?私を殺しに来たの!?私もう死ななきゃいけないの!?」
………
「クッ。クククッ!」
「は、」
「クハッ!おもしれぇ!」
「…す、すいません。今の渾身の叫びのどこに笑いの要素があったのでしょうか」
「あァ?」
「ひっ!すすすすいません!」
「ククッ、おい人間」
ムカッ
「だから名前ですってば」
「クッ益々おもしれぇ」
「…」
担いでいた、いや、しがみついていた私を地上に下ろし空色は言った。
「夜また来る。この辺彷徨いてろ」
「は?」
「居なかったら…探し出して喰い千切ってバラバラにしてやるからな、忘れんなよ
…名前」
ニヤリ。
震え上がる程に美しい獣の微笑み、
ゾクリとした。
(私の大好きな空を切り裂いて)
(空色は消えた)
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