空と空色と/グリムジョー | ナノ

02 不可抗力

「よォ、人間」
「!!!」
「お前、俺が見えんのかよ」
「!?」
「おぃコラ、聞こえてんだろ!さっき見てたよなァ?」
「………」
は、話し掛けられた。
しかも口悪い怖い。
チンピラか!
いやいや、んな事考えてる暇ない!
えぇい!逃げるが勝ッ
ってえぇぇえッ!?
空色の幻から逃げた、いや逃げたつもりだった私は、どうやら捕獲されたようです。
「おい、人間」
「…人間ですけど、名前は名前です」
「あァ?誰もてめぇの名前なんざ聞いてねぇよ」
「すいません、申し訳ありません、ですから下ろしてくださいお願いします。」
切実に。
だってここ空!
さっきまで地に足しっかり着いてたのに、今、空!空中!
しかも、何故か肩に担がれてる私。
何この状況。
「ハッ、下りてぇのか。じゃ下ろしてやろうか、今ここでよォ」
ニヤリ。
うああ、まただ、この表情。
かっこいいな。
って違う!!
「ちょ!ままま待って!今ここで下ろすというか落とすのはやめてくださいぃッ!!!」
「バッ、てめぇ暴れんじゃねぇ!つかしがみついてんじゃねぇ!」
「ぜぜぜ絶対離さないんだから!私まだ死にたくない!こんなの意味分かんない!!なんでこんな事なってんの!完全に不可抗力!私何も悪くない!ハッ!いや分かったかも!あんた死神!?死神なの!?私を殺しに来たの!?私もう死ななきゃいけないの!?」
………

「クッ。クククッ!」
「は、」
「クハッ!おもしれぇ!」
「…す、すいません。今の渾身の叫びのどこに笑いの要素があったのでしょうか」
「あァ?」
「ひっ!すすすすいません!」
「ククッ、おい人間」
ムカッ
「だから名前ですってば」
「クッ益々おもしれぇ」
「…」
担いでいた、いや、しがみついていた私を地上に下ろし空色は言った。
「夜また来る。この辺彷徨いてろ」
「は?」
「居なかったら…探し出して喰い千切ってバラバラにしてやるからな、忘れんなよ
…名前」
ニヤリ。
震え上がる程に美しい獣の微笑み、
ゾクリとした。

(私の大好きな空を切り裂いて)
(空色は消えた)

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