空と空色と/グリムジョー | ナノ

19 全てを受け入れる



私を見つめたまま固まっているグリムジョー。
もそもそと動いて、姫抱きからグリムジョーに跨がるように座り直した。
正面からじっと見つめているとゆるゆると手が背に回り、私はゆっくりと腕の中に収められた。
「…お前を抱いてると、安心する」
「グリムジョー」
「こういう事か、あれは」
「ふっ、そうだね」
「…」
そのままそっと抱き締めながら、グリムジョーは優しく私の腕や首筋を撫でた。
こんな風に触れられた事は無いからなんだか凄くこそばゆい。
「何?」
「いてえか…」
彼が言っているのは体中あちこちに刻まれた咬み痕の事。
強く深く刻まれたそれは、この数日で消える物ではない。
それは私にとって嬉しい事だった。
むしろ、消えてしまう方が辛い。
私は首を振った。
「痛くないよ」
「バカか。痛くないわけねえだろ」
「グリムジョーがつけた痕だもん」
「っ!な、何言ってんだ、お前はよ」
グリムジョーはビクリと体を揺らして、背や腕を擦りながらより一層強く抱き締めてきた。
「私、グリムジョーが好き」
「!…俺は、お前らから見たら化け物だ。そう言ったろ」
「関係ないよ。私はグリムジョーが好き、ただそれだけ。…グリムジョーは?」
「俺、は…俺は…」
「ん?」
言い澱んで目を逸らした。
心なしかその頬はうっすらと紅い。
ああ、可愛い。
そんな表情、反則だ。
「ッチ、名前!!」
「ん?え!っん!?」
グリムジョーからの言葉は無く、代わりにその思いをぶつけるかのようなキスが降ってきた。
私はそれをなんの迷いもなく受け入れる。
だって、嬉しい。
抱き締めてくれた事が、安心するって言ってくれた事が、照れてくれた事が、何もかもが。
この前の荒々しいそれとは違う優しいキス。
私の唇をそっと食むように触れた後、ちゅっちゅっと音を立てながら吸い付くように塞ぐ。
グリムジョーの猫みたいなザラザラとした舌が唇を割り歯列をなぞって、ゆっくりと口内に侵入してきた。
「は、っん」
「っ、ん…名前っ」
キスの合間に囁かれる自分の名前。
ゾクゾクと背を這い上がる様な感覚と、どんどん足りなくなる酸素に意識が遠退き始めた頃、そっとキスが終わる。
そして、至近距離で空色の瞳をしっかりと私に向け、唇を触れさせながらグリムジョーは言った。
「お前が好きだ、名前」
「っグリムジョー!!」





(再び重なり合う唇)
(ああ…心の壁は、取り払われた)



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