空と空色と/グリムジョー | ナノ

16 心



グリムジョーは傷だらけの私を家まで運び、そっとベッドに寝かせてから何も言わずに消えた。
もう会えないのかもしれない。
そんな考えが浮かび、無意識に流れた涙に私は理解した。
私は、グリムジョーが好きだ。

朦朧とする意識の中聞かされた彼の正体。
だけどそんなの私には関係なかった。
彼と一緒に居たい。
目を閉じてグリムジョーの言葉を思い出した。

『俺は化け物だ』
『お前とは存在も住む世界も何もかも違う』
『この孔は心、魂の欠落』 
『俺には破壊の衝動しかねえ』
『俺の世界には戦いしかねえ』
『人間なんてクズみてえな生き物なんか、興味無かったはずなのによ』
『あの男のようにお前を抱き締めたって、何も分からねえ』
『なのになんでこんなに腹ん中が気持ちわりぃんだ』
『お前とあの男を見た時のよく分からねえ衝動はなんだ』
『むしゃくしゃする、ぶっ壊してえ』
『お前を壊したら、スッキリするのか』
『俺が怖いか』
『化け物の俺が…怖いか』

「っ!」
あんな事されて全然怖くないなんて言ったら嘘になる。
だけどグリムジョー…
その感情はね…

溢れ出る涙を止める事は出来なかった。
私はグリムジョーが好き。
そしてもしかしたら彼も…。
化け物かもしれないけど、化け物だなんて思った事ない。
グリムジョーが来てくれるのいつも待ってた。
だって私からは会いに行けなかった。
会いたい。
会ってその感情の意味を教えてあげたい。
気付いて欲しい。
私は痛む体を自分で抱き締めて丸くなり、ただひらすらに涙を流した。






(彼と居られるのなら)
(彼と同じ存在になりたい)



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