空と空色と/グリムジョー | ナノ

14 白昼の黒煙



グリムジョーは何度も私を訪れるようになった。
来たからと言って特に何という事はないのだけど、ちょっと変わった友達が出来た、そんな感じ。
私の出した温い紅茶を飲んで、お菓子を食べたりテレビを見たり話をしたりゴロゴロしたり、最早違和感もない。
そんな日が暫く続いたある休日、たまたま近くを通ったからと浅野が家にやって来た。
玄関を通すと不意に浅野の表情が曇る。
「なあ、名前」
「ん?何?」
「前にも聞いたけどさ、お前…ホントにその、何ともねえか?」
「…ん?どういう意味?」
「え!あ!ほら、俺霊感みたいのあるって言ったろ?お化けとか出てないか?みたいな?こう、ドロドロ〜っと」
「あはは!何その顔!私はなんともないから平気だよ?」
深刻な話を誤魔化すようにおどけて問い掛けてきた浅野だけど、私はそれを分かってて嘘をつく。
浅野はきっと分かってる。
前にグリムジョーが言ってた。
グリムジョーと一緒に居る事で私の霊圧?霊感みたいな物が強くなるって。
それも浅野は感じ取ってるのかもしれない。
さっきの話は無かった事にして、リビングのソファに腰掛けて他愛もない話を沢山した。
ふと会話が途切れた所で、ソファに置かれた私の手に浅野の手が重なった。
「名前」
「ど、どうした」
「お前さ、好きなヤツとか居ないの?」
「好きな、ヤツ…」
「うん」
「好きな…」
「…人間の、中で」
「っ!?あ、浅野!?」
「へ?あ!!いや、何でもない!だ、だから好きなヤツは?」
「…分かんない。居るかもしれないし、居ないかもしれない」
「なんだそれ…じゃあさ…」
浅野の真剣な目が私を捉える。
触れられた手に力が込められ、ゆっくりと近付いてくる顔。
よく分からないドキドキが身体中に響く。
「名前」
浅野が私の名前を呼んだその時、

ドゴォォオオオンッ!!!
「「!?」」
凄まじい轟音が響き渡り、遠くの小高い山に黒煙が舞い上がった。
2人で窓から外の様子を覗いていると…不意に近くに感じる気配、これは…
「へっ!?ぎゃっ!」
確認する間もなく突然後ろから腰を掴まれて担がれ、瞬く間に私の家は遠ざかっていた。




(視界を掠めたのは)
(鮮やかに揺れる空色の髪)



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