空と空色と/グリムジョー | ナノ

13 未知の衝動


   -grimmjow side-

名前は変わったヤツだ。
この俺に臆する事なく接してくる。
面白半分で玩具にしてやったものの、興味が失せるどころか益々興味は湧くばかりだった。
自分でもどうかしてんじゃねぇかと思う。
たかが人間の女1人に固執するなんてな。
俺には常に「破壊」という衝動しか無かった。
昔の俺に比べたら名前に出会う前だって丸くなったと自分でも思ってはいたが、最近の俺は…。
恐らく、昔の仲間…シャウロンやイールフォルトの野郎共が今の俺を見たら唖然とするだろう。
別に腑抜け野郎になったわけじゃねぇ。
戦う事に飽きたわけでもねぇ。
未だに虚圏を統べてやがるハリベルをそう遠くない未来、引き摺り下ろしてやるつもりだ。
俺が王になる。
それまでの暇潰し。
と思ってたが…
こうして度々現世を訪れるのも悪くねぇ、と思い始めてるのも事実。

何度も言うが、名前は本当に全く俺を怖がらねぇ。
怯えるどころか、突然全身血塗れで訪れた俺を当たり前のように介抱しやがった。
自分でもなんであの時アイツを求めたのか分からねぇが、ハリベルに散々やられて戦闘放棄されて逃げられた後、気付いたら足が向いていた。
大人しく俺が自分で治しゃいいものを…

意識が浮上してきた時に感じたのは、アイツの柔らかく温かい手の感触。
顔や、仮面、仮面紋に触れ、孔の辺りにも触れてきた。
俺の腹の上に頭乗せやがる始末。
人間にあるはずの無いものばかりを目の当たりにして、名前が発した言葉は
「貴方はどこから来たのかな」
確かにアイツはそう言った。
よく分かんねぇが胸の辺りに変な痺れを感じてどうにも居心地の悪くなった俺は、グッと手を伸ばして名前の小せぇ手を握った。
アイツは真っ直ぐ俺を見つめてきた。
その俺の中を探るような視線にまた息苦しくなり、顔をしかめた。
俺の体はおかしくなっちまったのか。
アイツの言葉や行動にいちいち反応を示す。
気持ちわりぃ。

名前は孔の事は気になるが、俺が自分から話すまで聞かないと言った。
本当に変なヤツ。
そして…俺の前でアイツが初めて笑った。
更に息苦しくなった俺は、意味も分からずいつかコイツのせいで息の根が止まるんじゃねぇかとさえ思った。
まぁ誰にも倒されるはずのねぇこの俺が、こんなちまいの一匹に殺されるなんてありえねぇからな、例えばの話だ。

アイツに抱き着いてやがった男の話をした。
たまたま見掛けたわけだが…んとたまたまだぞ、ホントによ。
人間は何故あんな行為をするのか、俺にはサッパリ分かんねぇ。
名前は「安心したい時」にああするのだと言う。
勿論意味が分からねぇ。
分からねぇが、今俺とここに居る事がその「安心」とか言うヤツであればいいと、そう思った。
だからずっとそのままで居た。
まぁ、あの弱そうな男よか断然「安心」出来んだろ、俺は強いからな。

分かんねぇ事だらけだが、名前と居るのは悪くはねぇと思う。
この胸の辺りの違和感もすぐに取れんだろ。






(むず痒いような違和感)
(悪くねぇと思う俺は、
イカれ始めているのだろうか)



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