空と空色と/グリムジョー | ナノ

11 揺れる、ざわめく



「ん…」
どうやら私は疲れて寝てしまってたらしい。
グリムジョーのお腹に倒れ込むようにして伏せていた。
硬い身体。
孔、ある。
やっぱり見間違えじゃない。
この孔には何か理由があるんだよね、きっと。
私には計り知れない何かが。
グリムジョーのお腹に耳を当てながら、ぼんやりとまだ覚醒しない頭で考える。
孔の周りを撫でるとやっぱり、そこはひんやりと冷たく…
「貴方は、何処から来たのかな」
なんだかとても哀しい切ない気持ちになった。
ギュッ
「ッ!?」
突然私の手は、大きな冷たい手に包まれた。
ちょっとだけ痛い。
「…名前」
掠れた声が私の名前を呼ぶ。
耳を当てていたお腹から、私の身体中に声が響く。
顔を孔からグリムジョーの方にぐるりと向き直して、再び耳を当てる。
「…グリムジョー」
空色の瞳と視線が絡み合う。
一瞬、空色が揺れた。
「…お前、俺が怖いと思わねぇのかよ。その孔も、存在も、何もかも。」
そう言って顎で孔を指し示し、揺れる瞳が歪められた。
「グリムジョー、私、怖くないよ。」
「ハッ、強がってんじゃねぇよ」
「自分でもよく分からないけど、始めはそりゃ驚いたけど、怖くはない。なんでだろうね。私グリムジョーの瞳、好きだよ」
「は!?」
グリムジョーが目を見開いてる。
綺麗な空色が溢れそう。
「…この孔の事とか、聞かねぇのかよ」
「うん。気になるけど、気にしても仕方ないでしょ?グリムジョーが自分から話してくれるっていうなら別だけどね。」
「お前、バカな女だよな」
「フフ、そうかもね」
更に見開かれる瞳。
「…初めてだな、お前が笑うの」
「んー、そう?」
「フンッ、不細工」
「はぁ!?しっつれいなヤツ!!…否定は出来ないけど」
「ハッ、ククッ身の程弁えてんじゃねぇか!さすがは俺の下僕だなァ!!」
「ちょっと!また下僕って言った!!」
「クッ、下僕に下僕っつって何がわりぃんだ?」
「…ボロ雑巾みたいになって私の所に飛び込んできたくせに」
「ッ!?んだとコラてめえ!!」
グッ
「ぎゃっ!!痛い!!」
突然手を引っ張られた私は、すごい勢いでグリムジョーに突っ込んだ。
顔を硬い胸板に強打して痛い、酷い。
「クッ、色気のねぇ声だな相変わらずよ」
「う、うるさい!色気なんか必要ないし!ちょっと離してよ!!」
「あァ?そりゃ聞けねぇ願いだな」
引っ張られてそのまま、グリムジョーの上に乗ってる状態の私はどうにも居心地が悪い。
「…」
目の前の空色の瞳が、一点を凝視している、そこは…
「!?」
かぷっ
「グリムジョー!?」
「っるせ、黙っとけ」
咬み付かれた。
前と同じ場所を同じように。
そして、ゾクリと震える身体。
猫みたいにザラザラした舌で傷口をペロリと舐められたのだ。
「…そのうち話してやるよ」
「え?」
「この孔の意味。俺の正体をな。」
「…え」
「まぁ、気が向いたらな」
首の傷に指で触れながら、目の前でニヤリと口元を吊り上げた。






(知りたいはずの真実)
(でも聞いたら何かを認めなきゃいけないって、
多分怖かったんだ)



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