空と空色と/グリムジョー | ナノ

08 消えた空色

なんて身勝手な奴!
昨日突然現れた空色、もといグリムジョーはあの後、私の怒りと渾身のオムライスを無言でペロリとたいらげ、目の前で堂々と仮眠をかまし、『じゃあな、名前』とか言って、またニヤリと笑ってあっさり帰って行った。
敢えて突っ込まないけど、一瞬でシュッて目の前から消えた。
何処に帰ったかなんて知らない。
私は彼の名前と、人間じゃないって事くらいしか知らないんだから。
ああ、夜が明ける。
いったい何してるんだろうか私は。
見ず知らずのわけの分からない奴に絡まれ、捕獲され、自分の部屋に上がらせてお茶なんか出して、頭叩かれて気絶させられて、
下僕扱いされた上に…
あーーーーーッ!!
愕然。
そうだった。
私、か、咬み付かれたんだった!
どう考えてもおかしいよね!!
なんで咬まれる!
喉元咬むとか、ライオンとかの猛獣がやる事だよね!?
私、殺されかけたって事?
でも、それにしては甘咬みというか、ホント歯がちょっと刺さったくらいだった。
やっぱり…痕残ってる。
鏡を見れば、ドラキュラに咬まれたかのような傷痕。
傷の周りが紫に変色してる。
地味に痛かったもんな。
変な感じ。
ジンジンするけど、こそばゆい。
犬とか猫に咬まれた時って、こんなだったかな?
とりあえず、どんな不思議な、理解不能な事が起こっても朝はやって来るわけで、
まともに寝てないけど仕事なわけで、
重い体に鞭打って行かなければならないのです。
今度会ったら絶対絶対文句言ってやるんだから!
いつ会えるかなんて、今度があるのかなんて分からないけど。
(夜明けの空を見上げた)
(空に現れた彼は空に還ったのだろうか)

(イラスト:おもちさん)

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