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第8Q

「はい、名前っちパス!」
「うっわ!ちょ、早い早い!」


広い外のコートに涼太と2人。
突然パスされたボールに対応出来るはずもなく取り落とす。
涼太の笑い声がコートに響いた。
暫く涼太が動き回っているのを見ていた。
怪我をしてたのが嘘みたいに動けてる。
ホッとした。
少し汗をかいて満足したのか涼太がこっちに向かって来た。
「お疲れ様」
「ありがとッス!」
スポーツタオルなんて持ってないので自分のタオルハンカチを放る。
小さいけど無いよりはマシだと思う。
せっかく怪我が治ったのに風邪を引かせてしまっては大変だ。
私の隣に腰を下ろした涼太は、一度ふぅと溜息を漏らしてから私を見た。
「ん?」
「名前っちは…青峰っちの何処が好きなんスか?」
「は!?」
「何処ッスか?好きな所」
「な、なんでそんな事聞くの」
「知りたいんス」
「いや、そんな事言われても」
「教えて」
「黙秘権」
「そんなの無いッスよ」
「ちょっと、今日涼太くんなんか強いね」
「言ってくれないと、」
「え」
ドサリ
軽く肩を押されて背中に感じた柔らかい芝の感触。
私の両側には逃げ道を塞ぐように置かれた手。
顔を上げれば酷く真剣な表情をした涼太が迫っていた。
近い!
ていうかこの状況は非常にまずい!
両手で涼太の肩をグッと押し返そうと力を入れたけど勿論びくともしない。
「何処が、好きなんスか…」
「涼太、ちょっと落ち着こう」
「教えて欲しいんス」
「りょ、涼太」
「ッ教えてっ」
絞り出す様な苦しげな声が漏れた。
自分まで心臓をぎゅっと捩られる様な苦しさに襲われる。
「…優しいとこ、だよ。ぶっきら棒だけど、優しい所」
涼太は私の応えを目を閉じて眉間に皺を寄せて聞いていた。
涼太の気持ちが痛い程伝わって来るけど私にはどうしてあげる事も出来ない。
なんでも相談してとか頼ってとか、私が彼にして来た事はただ彼を苦しめるだけだったのかもしれない。
自分の軽率な発言を後悔し始めた時、2人しか居ないはずのコートに聞き慣れた声が響いた。
「黄瀬?」
「「!」」
「……は?…名前!?」
「っ大輝!?」
「青峰っち…」
大輝だ。
涼太に会いに来たんだろうか。
私と、私に覆い被さる様にしている涼太を見て大輝の顔付きが変わった。
そっと私の上から退く涼太とゆっくりとこっちに向かって歩いて来る大輝。
これって、所謂修羅場とか言うやつ。
なんて悠長な事考えてる場合じゃない。
悪いのは全部私だ。
「だ、大輝!あのね、私が」
「青峰っち、俺が名前っちをここに連れて来たんス」
「!涼太」
「無理矢理連れて来たんスから、名前っちに非は無いッスよ」
「うるせーよ、庇い合ってんじゃねーよ」
「!」
「青峰っち!!」
「ちょ、痛っ」
大輝は座り込んでいた私の腕を思いっきり引っ張って立たせた。
その大輝の手を涼太が掴んだけどもう片方の手で振り払われる。
「何処行くんスか!」
「ああ?帰るに決まってんだろ」
「そんなに強く掴まなくてもっ」
「っるせーんだよ!」
「「!!」」
大輝の大声に私と涼太の動きが止まる。
当たり前だけど、怒ってる…。
私は強く手を掴まれたまま大輝に引き摺られる様にして家まで帰った。


「だ、大輝…?」
「………」

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