UNSTOPPABLE-O・TO・NA- | ナノ

第4Q

「…名前っち…」
「やっほ!」


怪我をしたと知った日からずっと連絡を取れなかった涼太を大学帰りに発見。
猫背の後姿に違和感はあったけどあの目立つ容姿は間違えようも無かった。
声を掛ければ覇気の無い声で名前を呼ばれた。
あれ…あまり私には会いたくなかった感じ?
電話にも出なかったくらいだし。
以前のようなキラキラは影を潜め、幾分か気落ちした様な表情。
怪我の具合が思わしくないのだろうか。
「名前っち」
「うん?」
「連絡しなくて…ごめん」
「いいよ。気にしてない」
「…俺ってすげえかっこ悪いッスね」
「え?」
「情けないッス、自分が、ホントに…」
想定外にシリアスモードに突入した涼太に驚きつつ、近くのカフェに促して話を聞く事にした。
こんな彼を見るのは初めてかもしれない。

カフェに入ってコーヒーを一口飲んで一旦落ち着いた様子の涼太は申し訳なさそうに私の目を見て謝って来た。
「なんか、すんませんッス」
「ん?何も気にする事なんて無いけど?」
「名前っち…」
まるで捨て犬の様だ。
怪我をした事で心も衰弱してしまったのだろうか。
そういえば先週、怪我をした翌日だったか…各スポーツ新聞に『プロバスケ黄瀬涼太、まさかの故障』なんて記事が出ていた。
あれは読んでいて気分のいいものじゃなかったし、ああいうの色々見ちゃったとか。
なんにしても、目の前でドロドロと効果音でも付きそうなくらい背を丸めているワンコをどうにかしてあげないと。
「涼太、暗い」
「ぶっ…名前っちストレート過ぎるッス」
「だって、こんな涼太は初めて見るから」
「俺も初めてッス」
「ふふ。なんだそりゃ」
「それだけ自分にとってコレは一大事だったって事ッスよ」
コレ、と言って指差したのは足首。
新聞には『捻挫』『全治2週間』そう書いてあった。
治る怪我だし2週間大人しくしていればいいのに…こんなになるくらい外したくない試合だった、のかな。
大輝も今回の事はガッカリしてたけど。
「何か悩みがあるならぶちまけちゃえばいいのに」
「…そういうわけにも、いかないんス」
「なんで?」
「なんでもッス」
「うーん…そか」
私に相談してくれる気はないみたい。
ちょっと悲しい。
いつもは寄って来てくれるのにこういう時は頼ってくれないんだなと少し落ち込んだ。
思わず目線が下がる。
「!名前っち!俺別に名前っちの事頼りにしてないとかそういう事じゃなくて!なんていうか、その…とにかくこれは自分の問題だからっ」
びっくり。
エスパーか。
私考えてる事顔に出てた?
焦った様に弁明してくる涼太は必死の形相だ。
落ち込んでる人に気を使わせちゃって私何やってんだか。
「わ、分かった!分かったから落ち着こう!」
「っ!ご、ごめんなさい」
「いや、私が悪いよ。人の悩みを簡単に聞こうだなんて…」
「…名前っちは…優しいッスね」
「?」
「優しくてあったかくて…」
「涼太?」
「…青峰っちが羨ましいッス」
そう零した涼太は眉を下げて酷く寂しげな表情をしていた。


「大輝との試合、そんな楽しみにしてたんだね」
「…男にはココだっていう勝負時ってのがあるんスよ」

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