UNSTOPPABLE-O・TO・NA- | ナノ

第31Q

「名前…とりあえず、コレ外せ」
「コレ?…え!?」


絡めていた手を解いて大輝が『コレ』と言って引っ張ったのは私の首に下げられたチェーンだった。
私は一気に不安になった。
外せって、返せって事?
そんな事あるわけないと思いながらも不安は自然と行動に表れて、気付けばチェーンに繋がれたリングを握り締めていた。
「おい。手、退けろって」
「な、なんでコレ外すの?」
「いーから」
「やだ!気に入ってるんだから!」
「お、お前…ガキみてーな事言ってんじゃねーよ」
「嫌!」
「っだぁー…んじゃいーわ、とりあえず着けてろ」
「え?」
「まあ、どうせすぐ要らなくなるけどな」
そう言って大輝は私の体を持ち上げ自分の左脚の上に座らせた。
居心地の悪さにもぞもぞと身動ぎすれば腰を掴まれて距離を縮められた。
首元のリングをしっかりと握り締める私を見て苦笑いしている。
何これ、物凄く…恥ずかしい。
そしてふと真剣な表情になった瞬間、その私の左手を掴んでリングから引き離した。
またもや不安に襲われて大輝の表情を窺った…女々しい自分がちょっと嫌だ。
「だ、大輝?」
「…取らねーよ。だからそんな顔すんなバカ」
「じゃあ何なの」
「何、か。そーだな…」
「?」
含みを持たせる大輝に首を傾げる。
そんな私を見てまたその瞳に真剣な色を宿した。
「お前は俺のもん、だよな」
「!い、いきなり何ですか!」
「だよな?」
「う、うん」
あまりに真剣な大輝に気圧されて上擦った声で肯定の意を口にする。
「認めたな?」
「え、ちょっと…どうしたの?」
「…」
「……!?」
少し強引に私の手を取って持ち上げた。
その手は左手…
「大、輝…」
「返品きかねーんだからな」
「ッするわけない!」
「まあ、されたってまた首輪にしてやるけど」
「もうッ」
「泣いてんじゃねーよ」
「だって、と、止まんない」
とか言っておいて止める気もさらさらないのだけど、次々と溢れて来る涙を大輝の唇が掬ってくれた。
今私の左手の薬指でその存在を主張しているのは『永遠に私は大輝のものだ』っていう証。
小さいけど眩しい位の輝きを放つ石が埋め込まれたその指輪は、私の指に驚く程ピッタリと嵌まっていた。
「汚ねーな…鼻水垂らすな、バカ」
「う、う、嬉しく、て…」
「ったく。まだ何も言ってねーよ」
「な、何を?」
「っだから…その、アレだって」
「ん?」
「あー…あ、あ、」
「?」
「あ、愛してやるから…俺とずっと一緒に居ろ!」
「!」
涙がパタリと止まった。
驚いて上手く機能しない脳をなんとか働かせて大輝の言葉を再生する。
「………」
「…」
「……ぷ」
「てめえッ!!笑ったなコラァアッ!」
「ぎゃッ!だ、だって!そんなプロポーズ、聞いた事な」
「うっるせえ!」
「でも!」
「あ?」
「でも嬉しい」
「名前…」
「ありがとう…」
「お、おう」
「ずっと一緒に居るから…」
「…」
「愛してください」
「!」
浅黒い肌をこれでもかと真っ赤に染めて『仕方ねーからな』なんて小さく零した大輝が愛しくてたまらない。
大きな体に飛び付いて首にしがみ付けば大輝の両腕が私を包み込んだ。
ああ、此処が私の居場所だ。
真っ赤な大輝の頬に自分の頬を摺り寄せて幸せを噛み締める。
そして耳元で囁かれた言葉がまた大輝らしくて私は笑った。

「コレは予約だ。
ほんもんは…もうちょいオトナんなったら、な」


「オトナ、なんて大雑把だね」
「いーんだよ」
「その前に大輝はオトナになれるのかな?」
「んだとコラ」
「待ってる間にお婆ちゃんになっちゃったらどうしよう」
「…お前な」
「あはは!嘘だよ」
「ババアんなっても」
「ん?」
「ババアんなってもお前はお前だろ」
「…大輝」
「死んでも愛してやるから覚悟しとけ」
「!」
END
20140509

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