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第26Q

「コレだ!よし、買って来る!」
「あ?なんだよそれ」


仕事上がり、ちょうど試合を終えた大輝と合流して本屋さんで1冊の雑誌を買った。
バイト先が手掛けているスポーツ誌の発売日。
大輝の取材をしたという先輩は私に記事を一切見せてくれなくて、『我が社の為に1冊自分で買いたまえ』なんて言われて今に至る。
本屋さんの袋に隠れて中身は見えないしこれは取材嫌いの大輝には秘密だ。
大輝がお風呂に入ってる間にこっそり読もうと思う。
予定通り大輝をお風呂に誘導して私はリビングで雑誌を開いた。
『お前も入れ』とか言われたけど逃げて来た。
ごめん、大輝。
ワクワクしながらプロリーグの頁を開く。
「…う、わ…大輝、かっこい…」
試合中の写真…汗を拭ってボールを突きながら口元を吊り上げる大輝に思わず見惚れる。
その表情にドキドキしながら、その隣の頁に書かれたインタビューに視線を移した。
取材嫌いの大輝は大抵どんな質問の応えも簡単な言葉で済ましてしまう。
案の定今回も質問の方が長いと感じる様な返答だ。

休みの日は何をしていますか?
 −寝る
一番最近の休日では何を?
 −実家帰省
ご両親に会いに?
 −まあ、色々
チームの雰囲気はどうですか?
 −まあまあ。悪くはねえ
今一番のライバルは?
 −黄瀬
黄瀬選手は怪我から復帰後絶好調ですが、その黄瀬選手に何か一言
 −次はぶっ潰す
青峰選手は何故寮に入らなかったのですか?
 −寮には連れてけねえヤツが居るから

「………は!?」
思わず雑誌を閉じてしまった。
ちょっと…これ、大丈夫なの?
質問に対する大輝の答えに妙なドキドキと不安が広がる。
恐る恐るもう一度頁を開いた。

それはご家族でしょうか?
 −まあそんなとこ
それはどういった?
 −どういったって…首輪してるヤツだって
…ぺ、ペットちゃんでしたか
 −おう。ちゃんと首輪もしてるし、俺の事すげえ好きだぜ?
可愛らしいですね。ワンちゃんですか?ネコちゃんですか?
 −それは言えねえな
なんだか凄い動物を飼っていらっしゃるんでしょうか?逃げませんか?
 −逃げねえよ。俺が溺愛してやってるからな
幸せなペットちゃんですね
 −おう
青峰選手が居ないと寂しがって鳴きませんか?
 −あー、寝る時啼くな…可愛い声で
本当に溺愛されているんですね。是非今度はそのペットちゃんの事を教えてください
 −まあ、そのうちな

「な、な、な…」
読み終えた私は顔から火が出るくらい赤面していた。
このインタビュー、先輩絶対分かっててやってた!
大輝も大輝で…上手く躱したにしても色々際どい!
先輩、態と『鳴きませんか』に対して『啼く』って漢字変えたし!
悪戯にも限度がありますよ!
これを読んだファンたちは溺愛されているペットをさぞかし羨ましがるだろう。
若しくは動物に優しい青峰大輝萌え!とか言って好感度が上がるに違いない。
羞恥でどうにかなりそうで、雑誌をテーブルに放ってソファでのたうち回った。

「…名前、何やってんだお前」
「は!」
いつの間にかお風呂から上がった大輝が、わしわしと頭を拭きながら私を見ていた。
「顔赤いぞ?…あ、それ」
「あーっ!」
「へぇ」
テーブルの上に置かれた雑誌を見て大輝の口元が上がる。
その表情がちょうど雑誌にあったスナップの様で、またドキドキがぶり返した。
ハーフパンツ一丁、つまり上半身裸の大輝がゆっくりとこっちに歩み寄る。
持っていたタオルを放り投げて、ソファに寝転ぶ私の上に跨った。
エアコンが効いているけどお風呂上がりのその体はしっとりと汗ばんでいた。
「可愛い可愛いペットちゃんでも構ってやるか」
「な!ペットって何!」
「まあ俺はペットだなんて一言も言ってねーけどな」
「それにしたって!答えが際どい!」
「分かるヤツにしか分かんねーだろ、お前とか」
「!」
「嘘はついてねーだろ?首輪もちゃんとあるしよ」
「もう…私明日から先輩に会わす顔がない」
「いいじゃねーか、もう知ってんだろ?」
「それはそうだけど、って大輝」
「あ?」
「どこ触ってんの」
「おっぱい」
不穏な手の動きを察知して指摘すればあっさり返された。
「はぁ…私お風呂入るから」
「いーよ、そのままで」
「何が!?」
「セックス」
「やだ!無理!汗かいてるのに!」
「だからそのままでいいって」
「嫌!汚い!」
「汚くねーよ。すっげえお前の匂いして最高」
「ッ!へ、変態スケベやだ馬鹿もう変態!」
「うるせーな。ちょっと黙っとけ」
「!」
大輝の足が私の膝の間を強引に割って入って来た。
びくりと体を揺らせばクツクツと笑われる。
グーで肩を叩けば『効かねーな』なんて言われて口を塞がれた。


「いただきます」
「い、言わなくていいッ」

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