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第25Q

「いらっしゃい。早く上がって」
「お邪魔します」


大輝と私は久しぶりに青峰家に来ていた。
試験も終わったし大輝と私の休みも重なったので、久しぶりに顔を出そうという事になったから。
玄関でお母さんに歓迎されて、リビングではお父さんがにこやかに迎え入れてくれた。
家族って、あったかい。
夕飯の支度をお母さんと一緒にして皆でご飯を食べて他愛もない話をして笑い合った。
大輝はこんなだけど、こんなに温かいご両親に可愛がられて育って来たんだなぁと思って嬉しくなった。
片付けも終わってリビングで寛ぎながら食後のお茶をいただいた。
自分の昔話をされてちょっと不機嫌になった大輝は居心地が悪いのか口数が減っていた。
小学生の頃、友達から怖い話を聞いて夜トイレに行けなくなってお漏らししちゃったとか…子供なんだしそんなの可愛いもんだと思うんだけど。
自分の醜態を晒されてプライドに傷がついたらしい。
相変わらず大輝はつまらなそうにしてそっぽを向いている。
お茶をごくりと飲み込んで顔を上げると、にこにこ笑顔のお母さんと目が合った。
「ところで名前ちゃん」
「はい」
「うちのバカ息子といつ一緒になってくれるのかしら?」
「え!」
「っぶぅーーーッ!!」
「ちょ、大輝!」
「なんだ、汚いぞ大輝」
隣でお茶を啜っていた大輝が盛大に吹き出した。
無理も無い。
だって、こんな話…。
荒々しく口元を拭いながら大輝が大声を上げた。
「おい!何言ってんだババア!」
「大輝ったらグズグズしてると捨てられちゃうわよ?」
「は!?」
「そうだぞ?お前みたいなのを受け入れてくれる器のデカイ子なんてもう二度と現れないぞ?」
「はぁ!?」
「そうねえ。きっと最後のチャンスよ」
「まだそんな年じゃねーよ!」
「まあ!こんなにいい子を差し置いて遊ぶ気なの?」
「な!遊ぶか!コイツ以外考えられるかって!…あ」
「…」
「うふふふ」
「あっはっは」
か、顔が熱い。
ゆっくりと隣に顔を向ければ、同じ様に顔を赤くした大輝が横目で私を見ていた。
うぐ…その顔は狡いと思う。
お父さんとお母さんをチラリと見ると2人ともにこにこと微笑んで私たちを見守っている。
居た堪れない。
突然大輝が立ち上がって私の腕を掴んだ。
その勢いで私も一緒に立ち上がる事になる。
大輝は依然にこにこしながらこちらを見ている2人にチッと舌打ちをして、ソファの脇に置いた私の荷物を引っ掴んだ。
「あら、もう帰るの?」
「ったりめーだ!帰る!」
「もう少しゆっくりしてったら?」
「しねーよ!」
「あらあら、ふふ」
頭をガシガシと掻いて、掴んでいた私の腕を離して今度はぎゅっと強く手を握る。
それを見てまたお母さんがクスクスと笑えば、思いっきり手を引かれて私は引き摺られる様にして玄関に向かった。
靴を履いている間に2人が玄関にやって来る。
お母さんが苦笑いをしながら『名前ちゃん、こんな息子でごめんなさいね』なんて言って来た。
更に大輝の機嫌は急下降だ。
「お、お父さんお母さん!お邪魔しました!」
そのまま外に引き摺られそうな所を踏ん張って2人に声を掛けたら、笑って手を振ってくれた。
「またおいで」
「いつでも待ってるわね」
「ありがとうございました!」
「行くぞ名前」
強引に外に連れ出した割に私の手を掴むその手は優しい。
珍しく大輝が私の荷物を持ってくれているので片方は手ぶらで落ち着かない。
荷物を取り返そうと手を伸ばせば遠ざけられた。
「いーから。とっとと帰んぞ」
「はーい」
笑いを漏らせばジト目を向けられた。
全然怖くないけど。
なんだかほっこり温かい気持ちで、2人の家までの道を歩いた。


「もう、大ちゃん子供なんだから」
「ああ!?」

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