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第22Q

「おーおー、青峰っち。よく帰って来たね」
「…す、すんません」


奏にバシバシと背中を叩かれて口元を引き攣らせている大輝を見てテツくんと私は微笑んだ。
大輝がジト目を向けて来たけどそんなの無視だ。
助けてなんかあげない。
「結局、青峰くんがただひたすらヤキモチを焼いていたという事ですね」
「う、うるせーぞテツ!」
「いじけて家出した人が強がらないで下さい」
「…お前、俺に恨みでもあんのかよ」
「いえ。青峰くんにも畏れる物があったんだなと考えたら嬉しいなと思っただけですよ」
「お前性格歪んでんぞ」
「青峰くんは真っ直ぐ過ぎるんですね、きっと」
「うぜえ!!」
大輝とテツくんの会話を聞きながら奏と私は笑った。
久しぶりのこの感覚に幸せな気持ちが胸に広がる。
奏が出してくれた紅茶を飲みながら幸せに浸った。
ピンポン
「はいはーい」
インターホンの音にモニターを確認せずに玄関に向かった奏。
戻って来た奏に続いて部屋に入って来たのは、涼太だった。
ちょっと奏さん、聞いてませんよ!
「ども!ちょっとお久しぶりッス」
「黄瀬くん、こんにちは」
「き、黄瀬!」
それぞれの反応を見せる面々。
私はと言うと、思わぬ来客に声を掛ける事が出来ずにいた。
涼太とは想いを告げられて以来会ってないし連絡も取っていない。
そんな涼太の視線が私を捉える。
「名前っち、元気だったッスか?」
「うん…涼太は、もう足は大丈夫?」
「勿論!バッチリ完治してスタメン出ずっぱりッスよ!」
「そっか。良かった!」
罪悪感を覚えつつも元気そうなその姿に少しだけホッとする。
にっこり笑ったその顔は出会った時から向けてくれた屈託のない笑顔だった。
お返しとばかりに私も全開の笑顔を向ければ、いきなり頭を掴まれて後ろに引っ張られた。
「青峰っち…何スかその乱暴な扱いは」
「あ?コイツは俺のもんなんだから当然だろ」
「女の子はもっとお姫様みたいに扱ってあげないと…愛想つかされちゃうッスよ?」
「うるせーよ」
「…見た所、首輪もしてないみたいだし?」
「はあ?首輪?してんだろ、首に」
「えー?指ががら空きッスよ?」
「…」
「心配ならしっかり首輪でも何でもしといて下さいって言ったじゃないッスか」
「…るせー」
「はぁ…ダメダメッスねえ、こんなんじゃまた」
「お前今度名前にちょっかいかけたらはっ倒すかんな!」
「こ、こら大輝!」
何やら喧嘩腰になって来た大輝を引っ張って涼太から離す。
涼太は呆れた様に大袈裟に溜息をついた。
「青峰っちはホント…名前っちの事となるとすぐカッとなるんスから」
「あ?」
「ちょっとは信じてあげないと、可哀想ッス」
「!」
「りょ、涼太…」
「ってまあ、俺が言えた立場じゃないんスけどね」
舌を出して微笑んだ涼太は私の頭に手を乗せてポンポンと叩いた。
勿論その手は大輝によって払われる。
そのままその大輝の手は私の体に巻き付いた。
「ほーら、これッスから」
「あはは」
「うっせ…何しに来たんだよお前は」
「…お詫びに来たんスよ」
「はあ?」
そう言って涼太は私たちに向かって頭を下げた。
驚いて大輝と視線を合わせる。
「すんませんッス…引っ掻き回す様な事して」
「…黄瀬」
「自分がけじめつけたいからって…身勝手だったッス」
「吹っ切れたんならいんじゃね?」
「…青峰っちが一番振り回されたじゃないッスか」
「うっせバァカ」
「でも羨ましいッス」
「んだよ、諦めわりぃな」
「違うんスよ。引き摺ってるとかじゃなくて…目一杯愛されてる青峰っちが羨ましいんス」
「あ?」
「名前っちは青峰っちが思ってるよりずっと青峰っちの事大好きだって事ッスよ」
「!!」
「は…はあ?」
「だって俺聞いちゃったんス。どんな酷い「あああーッ!!」」
涼太が言い掛けた言葉を大声で遮る。
自分が涼太に言った言葉を思い出して顔に熱が集まった。
『どんなに酷い事されても、多分私…大輝の事、許しちゃうんだと思う』
恥ずかしい事言ったとは思うけど真実だ。
どれだけ大輝を好きかなんて自分が一番良く分かってる。
とんでもない爆弾を投下して涼太は帰って行った。
その表情が明るく晴々していた事が唯一の救いだ。
だけど、『アイツに何言ったんだよ』なんて毎日の様に大輝に追求される事になるのは言うまでもない。


「おい名前、いい加減教えろって」
「い、一生言わない!!」

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