unstoppable番外編 | ナノ

番外編4-大学にて-

「ふぁー。眠い…」
「遅くまで電話してるからだよ」


大学の講義中。
大欠伸をする私のおデコを奏が突く。
奏様のおっしゃる通り、昨日は大輝と電話してて寝るのが遅かった。
特に用事があったわけじゃないんだけどなんとなく、たまには電話で話すのも新鮮かなって。
「そういう奏だって、昨日は随分帰り遅かったよねー」
「うん。だってデートだもんっ」
「…冷やかすつもりが結局これか」
「ふん!もっと腕上げてから来なっ」
「うぇーい」
肘を着いて気怠い返事を返せばもう一度おデコを突かれた。
うん、結構痛い。
おデコを擦っていると突然頭上から何かが降って来た。
「ん?」
目の前にはクシャっと丸められた紙。
上から降って来たって事は…後ろ?
そう思ってそっと後ろを振り返るも、講義に集中する生徒ばかりで特に変わった様子はなし。
奏の肘をツンツンして髪を見せてみたけど『?』状態だ。
紙を開いてみると何か書いてあった。
『姿勢悪い』
え、誰ですか!
うーん、と首を傾げていると今度は後頭部に軽い衝撃。
バッと振り返ると、後ろの席の人たちはそれぞれ違う違うとアピールしている。
何なの!?
落ちた紙を拾い上げて見ると今度は
『集中しなさい』
だから何なの!?
イラッとした所で講義終了。
立ち上がって周りを見渡したけど、やっぱり変わった様子はない。
「何?名前ってば誰かに恨まれてるんじゃない?」
「ちょっと!普通に生きてるだけなんですけど!誰に恨まれるっていうの!?」
「苛められないといいねー」
「凄い他人事!!」
その後特に何事もなく午前の講義を終えて昼食を済ませ、更に眠気を催す午後の講義になった。
一番後ろの席を陣取る。
眠いからではありません、断じて。
…前言撤回、開始直後にカクンカクンと船を漕ぎ出した私。
奏は呆れて、1人講義に集中している。
白目になりそうになりながら眠気と戦っていると、隣の席に人が座る気配がした。
「すみません。今退かします」
教材が広がっていて邪魔かもと思い、なんとか意識を保って自分の教材を手繰り寄せた。
よし、これで心置きなく…
「おいおい、寝る気かよ」
「…」
「寝惚けてんじゃねーよ」
「…っ!?」
聞き覚えのあり過ぎる声に驚いて隣を見ると、そこにはニッと口元を吊り上げて笑う大輝が居た。
ちょっと!どういう事!?
思わず立ち上がりそうになった私の手を大輝の手が掴んだ。
「(バカ!バレんだろ)」
「(なんでここに居るの!)」
「(いーだろ)」
「(いやいや、全然良くないから!見つかったらどうすんの!)」
「(お前がしっかりやってるか見に来てやった)」
「(心配しなくてもちゃんとしてます)」
「(寝そうになってたじゃねーか)」
「(う…)」
大輝はひそひそ話を終えると、こっちを向いて机にぐてっと体を預けた。
そのまま教授に気付かれる事無く、斜め下から痛い程の視線を感じながら本日最後の講義を終えたのだった。

「青峰っちってばどしたの!」
「テツと一緒に紛れ込んだ」
「え!テツも?どこどこ!?」
「世話になる予定のバスケ部に挨拶してくるとかで」
「分かったありがと!バスケ部ねっ!じゃ、名前お先!」
「え!奏!?ちょっと待っ…は、早」
「おー、テツ愛されてんなー」
「ていうか大輝何してんのホントに」
「細かい事気にすんなよ」
「細かくないし気になるわ!」
「うるせーな」
「あっ!!」
「なんだよ」
「紙投げたの大輝!?」
「おー、名前にしては珍しく勘がいいな」
「何やってんのもう!皆に変な人扱いされたじゃん!」
「あ?関係ねーよ。変人でいーだろ、俺以外に好かれる意味ねーし」
「ぎゃーそういうのサラリと言わないで超恥ずかしい!!」
「お前今日いつにも増してうるせーな」
「誰のせいですか!」
「おら、行くぞ名前」
「え?行くって何処に」
「いーから。ほれ」
「うわっ」
強引に手を引かれる。
大輝の大きな手が私の手をぎゅっと握った。
ギャンギャン文句を言いながらもホントはちょっと…否、結構嬉しかったりする。
大学を大輝と一緒に歩けるとは思ってなかったから。
先に行ってしまった奏とテツくんを探しに…なんていうのを理由にして、手を繋いで沢山歩いた。
ついニヤニヤてしまったのは許して貰いたい。


「ふへへ」
「なーにニヤけてんだ、キモイぞ」

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