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想定外

「邪魔するのだよ」
「どうぞどうぞ」
この家での生活にも少しずつ慣れて来た頃、私は真太郎を招いた。
頭のいい真太郎に勉強を教わる為だ。
高校時代もよくこんな風に教えて貰っていた。
…別に私は馬鹿じゃない、と思う…自分では。
「お前は基本はちゃんと出来ているのだから、落ち着いて考えれば出来るのだよ。馬鹿め」
「ば、馬鹿…」
真太郎の教え方は分かりやすい。
下手すると先生よりずっと。
私が問題を解いている間は、なんだか難しそうな本を読んでる。
それが妙に様になってて憎らしい。
暫く集中してからのお茶休憩。
途中で買って来たお汁粉を差し出す。
私は緑茶だ。
餡子はちょっと苦手。
「いただくのだよ」
「うん、どうぞ」
ズズズという音だけが室内に響く。
少しの沈黙の後、真太郎が口を開いた。
「名前」
「ん?」
「今日は同居人は居ないのか?」
「うん。朝からどっか出掛けてったよ」
「ところでそいつは何処の大学なのだよ。同じ2年なんだろう?」
「2年って言ってたけど、大学名までは知らない」
「お互いにか」
「多分。私も大学名は言ってないし」
「…それから、ずっと気になっていた事があるのだが」
「ん?何?」
何かを渋る様に黙った真太郎に首を傾げる。
そして意を決した様に顔を上げて声が発せられた。
「表札にあった苗字にかなり見覚えがあるのだが、人違いだと思いたい…その男の名前は何なのだよ」
「表札?ああ、こないだそれが気になって壁見てたのか」
「ああ。それで…」
「うん、あのね…名前は」
ガチャ
玄関で音がして言葉が途切れる。
あ、外出から帰って来たらしい。
リビングの扉が開かれて、同居人である人物が足を踏み入れた。
「っ!あ、青峰…」
「あ?……は?緑間!?」
「え」
2人の反応に固まる私。
真太郎は眼鏡のブリッジを押さえながら目を閉じ眉間に皺を寄せ、青峰くんもイカつい顔を更に歪めていた。
「2人とも…知り合い?」
「…」
「…」
「え、ちょっと」
「やはりそうだったか」
「真太郎?」
「…青峰とは、同じ中学だったのだよ」
「え!そうなの!?」
「なんで緑間がこんな所に居んだよ」
「あ、青峰くん。真太郎は私と同じ大学で…」
「…」
「名前」
「え、な、何?」
「見た事は無かったのか…」
「何を?」
「青峰も俺たちと同じ大学なのだよ」
「…ええっ!」
知らなかった。
青峰くんが同じ大学だったなんて。
あ、だから彼女も…。
「イチャつくなら自分の部屋でやれよ」
「なっ!俺たちは友人だ!お前と一緒にするな」
「はぁ?なんでそこに俺が出てくんだよ」
「ふんっ。お前の方こそもう少し女遊びを控えたらどうだ」
「…お前に言われる筋合いはねーな」
「し、真太郎。勉強!勉強始めよう!ね!」
妙に険悪になった空気をどうにかしようと話を切った。
青峰くんは何も言わずに部屋に消えて行った。
真太郎は溜息をついて私を見る。
「まさか本当にあの青峰だったとはな」
「私は2人が知り合いだった事にただ驚いてますよ」
「また高尾が煩くなりそうなのだよ」
『えーっ!マジでぇ!?詳しく教えろって〜!』
「…だろうね」
ぎゃんぎゃん騒ぐ高尾が安易に想像出来て顔が引き攣った。


真太郎にとっても私にとっても想定外
なんとなく、益々付き合いにくい

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