ある日家に帰って何か飲もうと冷蔵庫を開けると真ん中の段に白い箱を発見した。
いつも食材か飲み物しかない場所に妙な違和感だ。
多分青峰くんのだと思うけど。
「ああ、そうか」
見た感じケーキっぽいしきっとまたあの彼女が来たら食べる予定なのかもしれない。
食べたかったなぁなんてちょっと思いながらオレンジジュースを出して冷蔵庫を閉めた。
夕飯もお風呂も済ませてから部屋で課題に取り組んでいると玄関から音が聞こえて来た。
青峰くんが帰って来たらしい。
勿論構う事なく課題に集中だ。
1時間くらい経った頃、休憩にしようと部屋を出た。
リビングに青峰くんが寝そべっている。
お風呂上がりなのかTシャツとスエットパンツ姿に首にタオルを掛けたまま寝こけていた。
風邪ひくでしょコレ。
しかしここは無視無視。
必要外関わらない予定なのだから。
取り出したお気に入りの紅茶を淹れて部屋に戻ろうとしたら突然声が掛かった。
「おい」
危うく茶器を落としそうになったじゃないか。
リビングに目を向けると半身起き上がった青峰くんがこっちを見ていた。
「?…何?」
「暇?」
「え?」
「今暇かって聞いてんだよ」
「んー…休憩中」
「あっそ」
「…」
意味が分からない。
なんでそんな事聞いて来た?
不思議に思いつつ踵を返してまた部屋に戻ろうとすればもう一度話し掛けられる。
「おい」
「…なんですか」
「ちょっとここ座れ」
「はい?」
ココ、と指定されたのはリビングのソファだ。
何これ益々意味が分からない。
とりあえず目がめっちゃ怖かったので茶器をテーブルに置いて言われた通りソファに座ってみる。
すると青峰くんは立ち上がって冷蔵庫を漁り出した。
振り向いた彼が持っていたのは冷蔵庫の中に違和感たっぷりで存在していたあの白い箱だ。
それがテーブルに乗せられた。
そして更にフォークが2つ放られる。
首を傾げる私。
「1コやる」
「え?」
「やるっつってんだよ」
「え、ケーキ…これ、彼女のじゃないの?」
「…はぁ?」
「いや、だから…これ彼女と食べる用のヤツじゃないの?」
もう一度聞くと眉間に皺を寄せた超不機嫌な顔がこっちを睨み付けて来た。
超怖い!
真太郎!この人顔怖いよ!
心の中で真太郎に助けを求めつつ恐る恐る目を合わせれば、大きな溜息と共に言葉が発せられた。
「…結構、飯分けて貰ってるしよ」
「へ…」
「一応、借り作るのは嫌だしな」
「…」
驚いた。
借りって…そういえばたまに多く作った時は食事を分けてた。
けどそれにしたって。
「…意外と律儀」
「ああ?」
「!い、いや、何でもないです」
「じゃあ食え」
「…いただきます」
結局それ以上何も言葉を交わす事無く2人でショートケーキを黙々と食べた。
ケーキは大好きだし凄く美味しい。
けど……居心地、悪い。
別に貸しだなんて思ってないんだけど
あ、クリーム付けて子供みたい
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