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真太郎

『だからお前は馬鹿なのだよ』
『酷い!慰めてくれてもいいじゃん』
『馬鹿を慰めたらもっと馬鹿になるのだよ』
『真ちゃんのバカ』
『馬鹿に馬鹿と言われる筋合いはないのだよ』
『もういいです』
朝からこの言われ様。
だいたい悪いのは私じゃなくて…はぁ、これ以上考えるのは止めよう。
このやり取りの相手である緑間真太郎は高校時代の同級生で、なんの因果か3年間クラスも一緒、そして大学まで同じ道に進んでいた。
男という生き物があまり得意でない私にとって数少ない男友達の1人だ。
キツイ事ばかり言ってくるけど実は結構面倒見のいいヤツ。
ピンポン
インターホンが鳴った。
荷物を持って外に出れば長身の緑頭が立っていた。
「おはよ」
「おはよう…」
挨拶を交わすと真太郎はカチャと眼鏡のブリッジを押し上げて視線を壁に向けた。
「?どうかした?」
「…名前」
「な、なんですか」
「否…なんでもないのだよ」
「変な真ちゃん」
「高尾と同じ呼び方をするのは止めろ」
「変な真太郎」
「ふんっ」
真太郎は私が『真ちゃん』と呼ぶと怒る。
もう1人呼ぶ人が居るんだけどそっちにその呼び方を止めさせるのはもう諦めたらしい。
結局なんだったのか分からないまま私は真太郎の後を追い掛けた。

「し〜んちゃんっ」
「…」
「あ、高尾おはよ」
「よーぅ!名前おっはよ」
途中現れたのは高尾和成。
彼も同じ高校出身で真太郎の友達だ。
その流れで必然的に私もよく話すようになった。
私がまともに話せる男はこの2人くらい。
「なあ名前!昨日は大丈夫だったか〜?」
「何が」
「だぁーって、男と一緒に暮らしてっもがっ!!」
「馬鹿!声がデカイ!」
「高尾、お前にはデリカシーというものが無いのか」
「わりぃわりぃ!で、どうなのよ」
「背高いし顔怖いし口数少ないし女連れ込むし、先行き不安」
「うわ、マジ?女の子連れて来られんのは名前困るんじゃね?」
「そうだよ、部屋に引っ込んでなきゃいけないんだから」
「否でもさ、どうすんの?向こうの部屋から妙な声が聞こえてきたら」
「!」
「…高尾」
「あ、わり」
「防音だから平気でーす。全く、ホント男って生き物は」
「んな怒んなよー」
くだらない話をしながら3人で歩いた。

講義の間、私はある事に気付いてしまった。
「あれ…あの子」
「どうかしたのか?」
窓際の前方の席に座る女の子に見覚えがあった。
長い髪に派手な装い。
今日もお化粧はバッチリだ。
「昨日家に来た女の子だ」
「その男の彼女か」
「うん」
「世間は狭いな」
「ホントだね」
同じ大学だったとは驚き。
しかも面倒だ。
向こうは私の事を見ていないからまだいいけど。
なるべく顔を合わせない様に気を付けよう。
「何か困った事があったらすぐに言え」
「真太郎」
「…お前はすぐ無理をするからな」
「ありがと」


ポンポンと頭に乗せられた大きな手
私が触れられても平気なのは、彼だけだ

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