HOME…SWEET HOME? | ナノ

牛乳

「住めば都かぁ」
引っ越して来た翌日。
叔父さんが言っていた言葉を反復すれば、強ちそれも間違ってはいないかもしれないと思ったが慌てて頭を振った。
いくら設備などの居住環境がいいからって同居人が男なんてやっぱ間違ってる!
寝転んでいるベッドから起き上がって夕飯にでもするかと部屋を出た。
「大輝くん、じゃあね」
…女の声?
慌てて部屋に引き返してドアの隙間から玄関の方を覗く。
胸元を大きく肌蹴させた服にミニスカ、長い髪を靡かせた女が靴を履いている所だった。
そして甘ったるい声でもう一度『大輝くん』と囁きながら男の肩に手を掛けて顔を近付ける。
うげっ!!
そんなラブシーンを見るつもりなど毛頭なく、また部屋に引っ込む事になった。
あの人、彼女居たんだ。
益々住みにくくなった。
って別に干渉しないって約束なんだし普通にしてればいいのか。
でも同居人が女だって知ったら彼女の方もきっと嫌がるだろう。
なら私は彼が彼女連れ込む度に部屋に籠るか外出するかしなきゃいけないわけ?
叔父さん、やっぱり住んでも都になんかならないよ。
はぁと溜息を漏らすと同時、玄関の閉まる音がした。

暫くしてリビングに顔を出すと彼…青峰くんの姿は無かった。
設備の整ったキッチンを初めて使っての夕食だ。
料理の腕前はまあそこそこだと思う。
少しでもお兄ちゃんの負担を減らそうと料理くらいはと頑張ってた。
引っ越し蕎麦なんて言葉が浮かんだけどそれはいい。
昨日買って来た大量の挽肉を取り出して作り始める。
大好きなハンバーグを沢山作って冷凍しておこうって決めていた。
タネを作り終えてジュージューと音を立てながら焼いていると青峰くんがやって来た。
「…お前、自炊出来んの?」
「失礼だね。一応出来るよ、人並みにね」
「ふーん」
私を通り越して冷蔵庫を漁り出した青峰くん。
冷蔵庫から出したのは牛乳。
それから戸棚を物色してカップ麺を取り出す。
「うげぇ」
「…なんだよ」
「カップ麺に、牛乳…」
「いーだろ別に」
別にいい、関係ないし。
干渉しない約束だし。
だけど毎日こんな物食べてるんだろうか?
チラっと脇のゴミ箱を覗いて固まった。
…毎日か。
ハンバーグを焦げる前にお皿に盛りつけてから、カップ麺の袋を破こうとしている青峰くんに待ったを掛けた。
「ねえ」
「何」
「あ、いや…ハンバーグ…いる?」
「は?」
「あ、いらないならいいです」
「くれんの?」
「いるのであれば」
「じゃあ貰う」
なんて端的な会話だろうか。
出来上がったハンバーグとご飯とみそ汁、生野菜をテーブルに運べば、青峰くんはさっき出した牛乳をテーブルに置いた。
そしてコップを2つ。
「ハンバーグにも、牛乳…」
「お前も飲めば?」
「え」
「牛乳でも飲めばちょっとは乳、でかくなんじゃね?…いただきます」
「…!?なっ!」


人の胸を見ながら最低な事を言う下種男
ああ、そういや彼女も巨乳だったかなんて納得した

prev / next

[ back to top ]

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -