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未成年脱出

青峰くんに言われた通り夕飯の時間になる前に帰宅した。
だけど当の本人が不在とはどういう事だ。
何処に行ったんだ?連絡…と考えたけど私たちの間には連絡手段が無い事に今気付く。
そうだよね、だって連絡とる必要なんか何処にもないんだから。
お腹も空いて来たのでとりあえず夕飯作りにとりかかった。

2時間程して私が夕飯を作り終え、暇を持て余していたらやっと青峰くんが帰って来た。
「…おかえり」
「おう……ただいま」
青峰くんの両手には如何にも重たそうなコンビニの袋。
何をそんなに買って来たのだろうか…見た所飲み物みたいだけど。
それをリビングに持って行きガサガサと中身を出し始めた。
「ん?お酒?」
テーブルの上に沢山並べられたそれらは全てお酒だった。
それから所謂『おつまみ』と呼ばれる物の数々。
「青峰くん、どうしたのこれ」
「あ?飲むんだよ」
「飲む?でも青峰くんって」
「二十」
「え?」
「二十歳んなった、今日」
「え!?」
なんと今日は青峰くんの20回目の誕生日だったらしい。
勿論そんな事私が知るはずがない。
「お前も飲めんだろ?」
「え、なんで私がもう20だって知ってんの」
「…緑間と居るうるせーチャラ男が言ってた」
「高尾か」
「っつーわけだからちょっと付き合え」
「わ、分かった…あ…」
「あ?」
「おめでとう…誕生日」
「…おー…サンキュー」
不思議な誕生日会的なものが始まった。
しかも2人で、だ。
誕生日ならこの前の女の子と一緒に過ごせばいいのにという思いは閉じ込めた。
青峰くんとこうやってご飯を囲むのも多分あと僅かとなるのだから、と。
作っておいた夕飯を並べておつまみを出してテーブルを囲む。
なんだか静かなのも居心地悪いからと大して見もしないテレビを付けた。
バラエティ番組の馬鹿笑いが響く中ふと目の前の青峰くんに目をやったらガッツリ目が合ってしまった。
「…じゃ、じゃあ改めて、おめでと」
「もういーわそんなん。飲もうぜ」
「うん」
「「お疲れ」」
2人の声が重なって、カンっというチューハイの入れ物がかち合う音が響いた。

酒を飲むと人が変わるなんていう人がよく居るけど、私たちはどうやらそういう面倒なタイプでは無かったらしい。
とはいえお酒を飲むのは2人して初めての事だ。
数時間掛けて私は割と保守的にちみちみと飲んでいるけど青峰くんはなかなかの勢いで飲んでいる気がする。
顔色が変わらないのは色黒だからか、と漏らせば裂きイカが飛んで来た。
いつもより気持ち気分が良くて青峰くんを見ながら思わずふと自然に零れた笑みに自分で驚く。
目の前の青峰くんもポカンとして私を見ていた。
「お前さ…酒飲むと笑い上戸になんのな」
「そ、そんなに笑ってません」
恥ずかしくなった事を誤魔化す様にテレビに視線を向けた。
するといつの間にかゴールデンの時間を過ぎて番組が切り替わっていて…
『お酒の力でくんずほぐれつ!失敗談&成功談』
そんな文字がデカデカと出され、芸人がそれを読み上げる所だった。
テレビを付けた数時間前の自分を全力で恨んだ。
画面を凝視して思わず2人して固まる。
その間にも視聴者の意見や体験談がその芸人によって読み上げられていた。
『20代男性、好きなら襲いたくなっても仕方ない』
『20代女性、多少気になる相手ならオッケー』
『30代男性、好きな子が目の前にいるのにいただかないなんて男じゃない』
『20代女性、よくお酒の勢いって言うけど酔って出たのって意外と本心だったり?』
『20代男性、酔わないと言えない事、出来ない事だってある』
何を促進する番組だコレは!
後でクレーム送り付けてやると心の中で叫んだ。


ちょっと、そんな目向けるの止めて
テレビに触発されるとか馬鹿でしょ

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