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芽吹く

数時間の勉強の後、2人は一緒に夕飯を食べて帰って行った。
本日のメニューは真太郎のリクエストで和食。
他に特別にお手製のお汁粉を作ったら青峰くんに『うげえ』と嫌な顔をされた。
お汁粉を邪険にされた真太郎は不機嫌丸出し。
『お前には一滴たりともやらん』とか言って余ったお汁粉を全部タッパーに入れて持ち帰った。
真太郎には悪いけど『夏にお汁粉かよ』って言う青峰くんの意見に私は賛成だ。

「ふぅ…さて、もうひと踏ん張り!」
「お前、まだやんの?」
「そういう青峰くんは…諦めてるの?」
「俺は学部ちげえだろ。なんとかなる、馬鹿向け学部だからな」
「あ、自分の事馬鹿って認めた」
「…うるせーよ。俺もう寝るわ」
「あ、そ。おやすみ」
「…お、おう」
「?」
今の間は何?
青峰くんが部屋に消えたのを見送ってふと考える。
…ああ。
「おやすみとか、もしかして初めて言ったかも?」
そんな事に戸惑ったのかと思ったらなんだかちょっとだけ可愛いかもと思ってしまった。
こんな事思うなんて私、多分何処かおかしい。


ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ
「!」
携帯の振動が頬から脳に響いた。
やばい、勉強しながら寝落ちたらしい。
時刻は朝6時、もう起きて準備を始めなきゃいけない時間だ。
背筋を伸ばそうと両腕を上げるとバサリと床に何かが落ちた。
「…タオルケット」
見慣れないそれは勿論自分の物じゃない。
思い当たる人物は1人しか居ないのだけど…
「拉致られた私のタオルケット何処よ」
どうせ掛けるなら大分前に私が貸したヤツを掛けて欲しかった、なんて思ってみる。
青峰くんの部屋からはイビキが響いていた。
遅刻、しないといいけど。
そういえばエアコンを掛けっぱなしだったせいか体が冷えている気がする。
タオルケット、もし掛けてくれてなかったら風邪ひいてたかも。
落としたタオルケットをもう一度肩に掛けた。
瞬間ふわりと香ったのが当たり前だけど自分の匂いじゃなくて、何故か一瞬ドキッとしてしまった。
「…勉強し過ぎて頭やられたんだきっと」
ブンブン頭を振ってさっきの一瞬の『ドキ』を無かった事にした。


「ただいまー」
あと1日で前期試験が終わる。
ここ数日は試験後にバイトも入れていたせいもあってそろそろ脳も体力も限界だ。
ああ、私も真太郎みたいに頭が良かったらいいのに。
そういえば青峰くんはまだ帰って来てないみたい。
最近午後から夕飯時にかけて居ない事が多い気がする。
また新しい女の子でも出来たのかもしれない。
………。
…ちょっと待って、今なんでモヤッとしたの。
青峰くんが女の子を家に連れ込んでいた時の事が頭に浮かんだ。
それだけだ。
たったそれだけなのに。
なんだか凄く嫌な予感がしたので考えるのを止めた。
バタン
「…ただいま」
「お、おかえり」
少し経って青峰くんが帰って来た。
自らを『馬鹿』と名乗っただけあって青峰くんにとってもこの試験期間はなかなかに辛い物らしい。
いつもの気怠い顔に3割増しで疲れが見てとれる。
高額でWANTEDにでも載りそうな凶悪顔だ、何億ベリーだろう。
なんて冗談を考えながらもう一度青峰くんを見る。
「…んだよ」
「え、あ、何でもない…」
駄目だ、やっぱり私も相当疲れてるらしい。
切れ長の目の悪人顔を見てちょっとかっこいいかもだなんて…
そんなまさか。
テーブルにおデコを打ち付けてやった。
「…何してんだ、お前」
「だから何でもないよ」
「ぶっ、変な女」
「…」
突っ伏してた事で笑った顔なんか見れなくて良かったかもしれない。
ああ、本格的に駄目だ。


打ち付けたおデコが痛い
自分が色んな意味でイタイ

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