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卵2つ、牛乳2つ

「!」
「…」
「お、おはよ」
「…はよ」
び、びっくりした。
静かだから平気だと思って部屋から出たらリビングに青峰くんが居た。
朝ご飯にしようとそそくさとキッチンに向かう。
なんで慌ててるかって…昨日の今日で気まずい。
って、なんで私が気まずい思いしなきゃいけないんだ。
別にいつも通りいつも通り。
一呼吸置いて冷蔵庫を開けて食材を取り出す。
ベシャッ
「ぎゃ!」
…生卵を取り落とした。
座り込んで床に広がった無残な卵を掻き集める。
結構幅広く飛び散ってしまった。
面倒だ。
その時ふと頭上が蔭った。
「何やってんの、お前」
「!」
「げ…卵落としたのかよ」
「う、うん…え?」
リビングからいつの間にかキッチンへ来ていた青峰くん。
突然声を掛けて来たと思ったら私の隣に座り込んだ。
何故!?
思わず凝視する。
「あ?」
「い、いや…」
「んだよ。おら、早く片付けんぞ」
「!」
なんと手伝うつもりで現れたらしい。
意外過ぎてもうどう対応していいか分からない。

「…ありがとう」
「別に」
片付け終えてお礼を言えばそっぽを向いて返事をしてきた。
そのまま新しい卵を用意して目玉焼き作り再開だ。
卵の数は2つ。
一応片付け手伝ってくれたし朝食まだみたいだし。
ジュージューと焼けていく卵を見ていると青峰くんが動く気配がした。
部屋に戻るんだろうか。
否、違った。
え…
コポコポと音を立ててグラスに牛乳を入れる青峰くん。
グラスの数は2つ。
そしてテーブルの中央に食パンを袋ごと放った。
それをずっと目で追っていた私と青峰くんの視線がぶつかる。
「!」
「…お前」
「はい?」
「今日講義あんの?」
「?…うん」
「何時だよ」
「…10時、20分だけど」
「ふーん」
話はそれで終わってしまった。
出来上がった目玉焼きをなんとなく1つずつお皿に分けて、切っておいたフルーツをなんとなく半分ずつに分けた。
テーブルに放られた食パンをなんとなく2枚トースターに入れて、ジーという音を黙って聞いて焼き上がるのを待った。
チーン
「「…いただきます」」
よく分からないけど一緒に食べる事になった。
何これ。

妙な朝食を終えて大学に行く準備も済ませた。
荷物を持って玄関に向かうとそこには既に先客が。
手ぶらの青峰くんが靴を履き終えた所だった。
実に居心地の悪い状況でやっと靴を履いてドアノブに手を掛けると青峰くんが私を呼び止めた。
「おい」
「な、何?」
「緑間来んの?」
「え、真太郎?」
「迎え、…来んの?」
「いや、迎えは来ないけど」
「ふーん」
「?」
「…俺も講義10時20分」
「へ?…あ、そう」
「おー」
何これどうしたらいいの。
話しているうちに流れで一緒に玄関を出てしまった。
仕方ないから最後に出た私が家の鍵を閉める。
そして大学に向かって歩き始めると、斜め後ろをポケットに両手を突っ込んだ青峰くんが着いて来た。
なんで着いて来るの!と思ったけど当たり前だ。
同じ大学に行くのだから。
益々気まずい。
きっと歩くのもっと早いんだろうから私を抜かしてさっさと行ってくれたらいいのに。
そう思ってチラリと振り向くとバッチリ目が合ってしまった。
「あ、あの…」
「あ?」
「その、微妙に後ろを歩かれると、凄く歩きにくいんですけど…」
「はぁ?」
「お、お先にどうぞ」
「…」
「え」
私は『お先にどうぞ』と言ったはずだ。
何故隣に並ぶ。
「なんか不満かよ」
「…い、いや」
「ならさっさと歩けって」
「…彼女に見られたら、あまりよろしくないんじゃ」
「はぁ?彼女?」
「うん」
「居ねーよ、そんなん」
「は」
「おら、ちんたら歩いてると遅れんぞ」
「え、あ!ちょっと待って」
あれ…『待って』ってなに。
結局、何故かごく自然に大学まで2人で行く事になった。


ていうか何?
彼女居ないって…

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