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被害者

気分最悪になった私は財布と携帯だけを持って家を出た。
何処に行くかなんて考えもせずとりあえずあの家から少しでも遠ざかろうと歩く。
見たくもない人の情事後を見て普通に居られるかって話だ。
ふと前方に見慣れた姿を発見。
こっちに向かって歩いて来るその人は真太郎だった。
「真太郎?」
なんだか難しい顔をしている。
ずんずんと私に近付く巨体に思わず一歩後退った。
「名前」
「ちょ、どうしたの真太郎…帰ったんじゃ…」
「何があったのだよ」
「え」
「さっきお前と別れて散歩がてら歩いていたら、後ろから青峰の女が激昂した様子で俺を抜かして行ったのだよ」
「!」
「何かあったのか?」
心配して戻って来てくれたらしい。
私は苦笑いを浮かべて真太郎の手を引き近くのファミレスに入った。


「…最悪だな」
「でしょ?」
一通り話終われば真太郎はその綺麗な顔をこれでもかと歪めて溜息を漏らした。
そして今度は逆にホッとした様に話す。
「まあ、良かったのだよ」
「良かった?何が?」
「お前があの女と鉢合わせて一悶着あったのではと思った」
「…あー、そういう事」
「巻き込まれたわけではなくて良かったのだよ」
「真太郎…ありがと」
「な!れ、礼を言われるような事はしていない!!」
頬を赤くして焦り出す真太郎に頬が上がる。
いつもこうやって色々心配してくれる彼に感謝だ。
「とりあえず…何があったかは知らんがその女は捨てられたんだろう」
「え、そうかな」
「青峰にはおそらく、執着がないからな」
「ふぅん」
「来るものは拒まず、去る者は追わず、だ」
「淡泊だわ」
「だがきっとまた新しい女が来るのだよ。お前も苦労するな」
「それは勘弁してほしいよホント」
ぶつぶつと文句を垂れながらご飯を食べてしまった。
美味しい物もこれじゃ台無しだ。
食べ終えると間もなくデザートがやって来た。
目の前に置かれたパフェに頬が上がる。
「…お前は、そういう所だけは普通の女だな」
「普通って、私普通じゃないって事?んー…そうか、普通じゃないな」
「納得するな」
「あはは!」
「全く、変なヤツなのだよ」
「真太郎、はい。あーん」
「なっ!お、俺はいらん!」
「まあまあ、そう言わずに」
「な!こらっ、近付けるな!」
照れながら嫌がる真太郎にスプーンで掬ったチョコ掛け生クリームを突き出す。
あ、唇に着いた。
それを嫌そうに舐める真太郎。
嫌いじゃないくせに、観念して食べればいいのに。
「あーん」
「ん…」
「最初から素直に食べるのだよ」
「う、煩い!」
「あはは!…は、は?」
「ん?」
ふと一瞬真太郎から視線を窓に移したら鋭い目と目が合った。
いつからそこに居たのか信号待ちをしている様子の青峰くんがこっちを見ている。
真太郎も気付いた。
「…青峰」
「あ、さっきのあーん見られたかも」
「!名前っ!!どうしてくれるのだよ!!」
「まあまあ。あ、居なくなった」
「…はぁ」
額に手を当てて項垂れる真太郎を尻目に横断歩道に目を向けてみる。
ポケットに両手を突っ込んで気怠そうに歩く青峰くんの後姿が見えた。
焦っている様子は無かったけどさっきの彼女を追い掛けるのかな。
って私が気にする事じゃないから。
なんて思いながら残りのパフェを頬張った。


考えてしまうのは不可抗力
あんな物見せられた私は被害者だ

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