桜井良くんというスイマセン男子に遭遇した翌日、私はまたしても青峰くんの知り合いと鉢合わせてしまった。
「あーっ!青峰の彼女!!」
「いったぁ!!」
いきなりどつかれた。
なんなの。
「……違います」
「は?違うのか?」
「違いますってば。つか突然話し掛けてきてその態度、失礼ですよ?」
デカイ声を発してズカズカとこっちに詰め寄る背の高い男の人。
この人、見た事ある。
桐皇の人たちがバイト先に来た時、店の外でボールをクルクルしてた人だ。
この人もなんか目付き悪くて怖そう。
ていうかギャンギャン煩い。
あの眼鏡と同じ3年だろうか?
「悪い悪い。俺若松ってんだけどよ…あんた、青峰に部活行けって言ってくれよ」
「あんたじゃないです、苗字です」
「お、おお。で、苗字…よくあんなヤローと付き合えるな」
「だから違うって言ってるでしょうが!!」
「ちょ!お、おい、そんな怒るなよ」
「全くどいつもこいつも!つか若松くんだっけ!?部活に来て欲しいなら自分で言えばいいでしょ!」
「べ!別に来て欲しいとかじゃねえよ!試合出る癖に練習しねえとか、示しつかねえだろ?」
「だからそんなの私の知ったこっちゃないって言ってるの!」
「いや、あんたの言う事なら聞くんじゃねえかってよ…」
「私はただの知り合いです!一番偉そうな…ほら、あの眼鏡だって諦めてるみたいだし、放っておけば!?」
「眼鏡って…い、今吉さんの事か!あんた今吉さんとも仲いいのかよ!」
「知りません!……ん?今吉、さん?」
「は?」
「若松くんって、3年じゃないの?」
「俺、2年だけど」
「桐皇バスケ部の教育どうなってんの!!」
「え…あんた…3年なのか?」
「そうですけど!!」
「わ、悪い」
「もういい!慣れたし!良くんがよっぽど可愛く見える!!」
「良?桜井とも知り合いなのか?」
しまった。
言わなくていい事口走った。
これ以上桐皇の人たちとあんま関わりたくないのに。
「あんた顔広いんだな」
「…何故か桐皇限定でね」
「青峰に気に入られてんだからしょうがねえんじゃねえか?」
「…はぁ」
ま、自業自得って事か。
雑誌あげただけでこんなに懐かれるとは思わなかったけど。
「なあ」
「ん?」
「あんた、青峰とは付き合ってねえんだろ?」
「…だからそうだって言ってるでしょ」
「…そっか。なら…俺と付き合わねえか!!」
「…」
「…」
「…」
「…お、おい」
「は?」
「は?って」
「ご冗談を」
「冗談でこんな事言うかよ」
「あの…い、今会ったばかりなんですけど」
「か、関係ねえよ」
「ちょ、何顔赤くしてんですか」
「な!しょ、しょうがねえだろ!」
「いたッ!!」
バシッ!と背中を叩かれた。
いちいちどついて来るの止めて欲しい。
ちょっとだけ…可愛いけど…。
って何考えてるんだ私は!
「バイバイ!!」
「え!あ!おいっ!!」
どつき男を置き去りにして全力疾走だ。
こっちまで顔赤くなって来た。
青峰くんのせいで最近の私はよく絡まれる。
面倒臭い事この上ない。
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