青に染まる | ナノ

だから、違う

休日。
私は学校近くの本屋さんで立ち読みをしていた。
そこで足元に落ちている携帯を発見。
誰かが落としたらしい。
周りを見渡すと、少し離れた所にキョロキョロと焦っている様子の男の子を発見。
中学生くらいだろうか。
もしかしてと思って声を掛けてみた。
「あの、これキミの?」
「え!!」
「この携帯、キミのかなと思って」
「!!スイマセンスイマセン!僕のでスイマセン!!」
「…は」
「ご迷惑お掛けしました!スイマセン!」
「あ、いや…良かったね、見つかって」
「スイマセンスイマ……ええっ!」
「ええっ!?」
こっちが『え?』だ。
謝りまくって突然顔を上げて私を見たと思ったら、何この反応。
頻りに自分の携帯と私を見比べている。
意味が分からない。
「あああああああ青峰さんの彼女さん!ああああスイマセン!!」
「えーーーっ!!」
「スイマセン!僕あの、青峰さんのクラスメイトで、あの、同じバスケ部で…なんかスイマセン!!」
「クラスメイト、バスケ部…ってか高校生!?」
「っこ、高校生に見えなくてスイマセン!!」
「い、いや、謝られても…」
「スイマセンスイマセン!!」
う、うざ…。
いや、今はそれよりもどうしても気になる事が…
「ごめん!ちょっと携帯見せてっ」
「っえ!?あ、」
「……」
「す、すいま、せ、…」
「キミ!ちょっと一緒に来てっ」
「スイマセンスイマセンんんんっ!!」
謝りまくる男の子の腕を引っ張って本屋さんを飛び出した。

無理矢理連れて来たのは近くの公園。
完全に委縮している男の子をベンチに座らせて頭をポンポンと叩いてやってみる。
「す、スイマセン」
「…謝るの癖なんだ」
「スイマセン」
「っぶ。面白い」
「あ、あの…」
「ああ、ごめんごめん。青峰くんのクラスメイトって言ったっけ?」
「ハイ。桜井良です、スイマセン」
「あはは!桜井くんね。私苗字名前」
「名前さん…あ、名前知っててスイマセン」
「あー、青峰くんが教えたのかな」
「はい…なんかスイマセン」
「いいよいいいよ。で、1つキミにお願いがあるんだけど…」
「?はい…」
「その携帯の裏に貼ってあるプリクラ…剥がして貰っていいかな」
「っでぇえええ!?出来ませんスイマセンスイマセン!!」
「ええ!?なんで!!」
「これ剥がすなって青峰さんにっだからスイマセン!!」
「…あ、青峰くん…」
「スイマセン!!剥がすと僕青峰さんにっ!ああ!しかもこんな所で彼女さんと一緒に居る所見られたら!!ひぃいっスイマセンスイマセン!!」
「ちょ、桜井くん落ち着いて!大丈夫だから!」
「うわぁぁあスイマセン!!」
「だから大丈夫だって……ん?」
「へ?」
「…か、彼女!?」
「す!スイマセン!青峰さんの彼女さんと話しちゃってスイマセン!!」
「だから、ちがーーーう!!」
「ひぃ!!」
「だから違う!彼女じゃないから!」
「スイマセン!!」
埒が明かない。
ていうかほら…こんなプリクラ面倒でしかないんだってば。
青峰くんだっていちいち彼女だなんだ言われたら面倒臭いだろうに。
「分かったよ、もう剥がさなくていいから」
「スイマセン!!」
「分かったからその半泣き止めて、良くん」
「りょ!?す、スイマセンスイマセン!!名前呼んで貰ってスイマセン!!」
「っぷ、はは!もうウザイ通り越してカワイイよ良くん」
「えええっ!?」
「そのプリクラ、あんま人に見られない様にしてくれると助かる」
「っはい!気を付けます!」
「じゃあ、部活頑張ってね」
「ありがとうございます!!名前さん」
「バイバーイ」
なんだか憎めない男の子だ。
別れ際、申し訳なさげに背を丸めて遠ざかる彼のボヤキが聞こえてしまった。
『ああああ青峰さんの彼女さんに会っちゃったどうしよう』
「っだから!ちっがーーーう!」


非常にマズイ。
私の知らない所で浸透しそうだ。

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