青に染まる | ナノ

違う

「で、名前ちゃん」
「は、はい」
「昨日のアレはどしたの?」
「ええと」
「やっぱ付き合ってんの?」
「いえ、だからそれは断じて違います」
案の定、翌日バイトに入ってすぐ先輩に掴まった。
どんな答えを期待しているのかその目は爛々と輝いてる。
「よく分かんないんですけど、友達みたいな感じになっちゃったんですよ」
「ふぅん?友達ねえ…」
「先輩にだっているでしょ!女の子の友達!」
「まあね。しかしイカつい友達だな」
「それは私も思ってます」
「あ、噂をすれば」
「あ」
本人のご登場だ。
今日も相変わらず気怠そうにしてる。
そういえば昨日は結局スポーツショップとかゲーセンとかに付き合わされて、帰宅したのは21時を過ぎていた。
部活行くのを面倒臭そうにしてた割にバスケコーナーを見る目はちょっと輝いてたように感じる。
敢えて何も言わなかったけど。
ゲーセンでは色々やったけど私が下手過ぎて相手にならず、最終的にはすっかり諦めて青峰くんの隣で大人しく見学してた。
私なんか居なくても1人でも十分楽しそうだったんですけど…。
それから、
「よぉ、名前!」
「どうもー」
「見ろよコレ!ここに貼った」
「え!ちょ!!」
来るなり自分の携帯を掲げて私たちに近寄って来た青峰くん。
その携帯には…
「ほれ、昨日撮ったヤツ」
「ギャーッ!!」
「…名前ちゃん」
「あ?んだようるせーな。何喚いてんだよお前」
昨日ゲーセンで勢いで撮ってしまったプリクラが貼られていた。
ちょっと待て。
知り合って1日2日の人間のやる事か?
そういうのは彼氏彼女でも恥ずかしくてなかなか…
しかも勢いでふざけて撮ったヤツならまだしもまさかの一番普通顔のを選ぶなんて!
「あ、青峰くん」
「あ?」
「それね…剥がした方がいいと思う多分、いや絶対」
「なんでだよ」
「いや、勘違いされるよ」
「何をだよ」
「だから、私たちがなんていうかごにょごにょ…」
「いーだろ別に。俺のケータイだし俺がどうしようと勝手だろ」
「や、うん。それはそうなんだけど」
「お前も貼っとけよ」
「ええ!」
「今ケータイ持ってねーの?」
「私は貼らなくていいです」
「あ?お、持ってんじゃねーか。ちょっと貸せ」
「え!あ!コラ!!」
バイトの制服のポッケから私の携帯をヒョイと奪った。
そして財布の中から昨日のプリクラを取り出す。
「アンタ、ハサミ貸してくんね?」
「え、あ、ああ…どうぞ」
先輩からハサミを受け取るとチョキチョキと大雑把に切って…あろう事かど真ん中に貼り付けた。
親指でギュっと押し付けて満足そうな笑みを向けながら携帯を返す。
恐る恐る裏返して見れば…
「うぎゃっ!ちょっ、なんでコレ!?」
「ぶは!うぎゃってなんだよお前、やっぱおもしれーな」
「わ、笑い事じゃない!」
「おい、それ剥がすなよ?」
「え!今すぐにでも剥がしたいんですけど!!」
「あ?剥がしたらそこのセンパイにあの事バラすぞ?」
「ええ!?それは交換条件成立したじゃん!」
「バラすぞコラ」
「わわわ分かった!分かったから!」
「ぜってー剥がすなよ?」
「…う、うん」
「ん。じゃ俺帰るわ、じゃーな」
「ば、ばいばい…」
店を出て行く青峰くんを見送った後、もう一度携帯を裏返して見る。
「こ、こんなの、どうしろっての」
キメ顔で後ろから私に抱き付く様に圧し掛かる青峰くんと、驚いて目を見開いてるブサイクな私。
見て居られなくて慌てて携帯を仕舞った。
途中空気になっていた先輩は万遍の笑みを見せてから上がって行った。
『名前ちゃん、もう付き合ってるの認めちゃいなよ』
もう白目だ。


こんなの羞恥プレイだ。
まるで付き合いたてのカップル。

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