青に染まる | ナノ

あげる

「おい」
「!?」
本日のバイト終了時間間近。
お弁当を陳列していると突然後ろから声が掛かった。
聞き覚えがある。
この低い声は多分…
昨日聞いたばかり、名前を知ったばかりの彼の声。
振り返れば案の定予想した人物が立っていた。
「はい、なんでしょうか?」
「焼肉弁当ねーの?」
「ありますよ!今出しますね」
「おー、さんきゅ」
今さっき入って来たばかりの焼肉弁当を出して手渡した。
満足気にそれを受け取ってレジに向かう姿を見送る。
後はレジに構えている先輩に任せて私は上がりの時間だ。
裏に下がって帰る準備をしていると視界の端に雑誌の山を捉える。
そういえば今週はまだ廃棄してなかったんだ。
「…あ」
積み上げられた中段程に週刊○○…『堀北マイ特集』を発見。
さっきの彼が欲しがってたヤツだ。
引き抜いてみればだいぶ草臥れてる。
確か先週は毎日のように通って見てたっけ。
って事はこのボロボロになった表紙は彼が通い詰めた証、みたいな?
いや…証なんて言い方は間違ってるな、うん。
立ち読みだし。
つか、そんなに堀北マイちゃんが好きなんだ。
「…」
私は少し思案してその雑誌を手に取って店を出た。
外から店内を覗くとさっきの彼は焼肉弁当の温め待ち。
先輩が温め終えたお弁当を袋に入れて手渡し、その袋をぶらぶらとさせながら店を出て来た。
声の届く距離まで近づく。
「あー、あの」
「あ?」
おおう!顔怖い!
デカイから物凄く見下ろされて余計に威圧感がある。
まあ、とりあえず
「これ、良かったら」
そう言って差し出したのは週刊○○堀北マイ特集。
それを見た鋭い目がカッと見開いた。
「は?ま、まじで!?」
「ま、まじで」
「いいのかよ!?」
「うん、秘密にして貰えれば」
「おう!!するする!ぜってー誰にも言わねーよ!!」
「わ、あはは」
「あ?何笑ってんだ」
「いや、凄い食い付きだから」
「あたりめーだ、マイちゃんだぜ?」
「はは、良かった」
「お前!いいヤツだな!!」
「そりゃどうも。じゃあ」
「おう!まじでさんきゅーな!!」
目を輝かせてお礼を言うもんだから普通に照れ臭い。
怖いヤンキーみたいなタイプだと思ってたけどそうでもないらしい。
なんだか妙にほっこりした気持ちになって家への道を歩いた。


超強面の彼は
笑うと意外と可愛かった、なんて。

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