青に染まる | ナノ

会話する

火曜日。
いつもの様にバイトに励んでいれば、お客様の入店を知らせる音と共にあの青い彼がやって来た。
勿論行く先は雑誌コーナーだ。
きっと週刊誌を読み漁るんだろう。
当番のトイレ掃除に向かいながらチラリと様子を伺えば、雑誌を物色しているみたいだ。
低い声で『は?』とか『まじかよ』とかぼやいてる。
なんだか怖いからさっさと通過してトイレに逃げ込んだ。

トイレ掃除を終えて出て来ると、ちょうど交代で入った先輩が雑誌の並びを直していた。
「お疲れ様です」
「あ、名前ちゃんお疲れ!」
「あれ?さっきここにいつもの色黒の人居ませんでした?」
「ああ、居た居た!文句言いながら今さっき帰ってったよ」
「文句ですか?」
「うん。読みたい雑誌が無かったのかもな〜」
「そうなんですね」
「相変わらず怖い顔してたよ」
「あはは」
きっと舌打ちして帰って行ったんだろう、なんて知り合いでもない自分が何故か彼の行動に想像がついてしまって、顔がちょっと引き攣った。


翌日。
また同じくらいの時間に彼は来た。
雑誌の入れ替え作業をしていた私は、邪魔になる前に退かなければと急ぐ。
というより怖いので逃げる。
撤収する雑誌を数冊抱えて立ち上がった所で、なんと!低い声に呼び止められた。
「おい」
「!」
やばい怖い。
「おい、聞いてんのか?」
「はいっ!な、何か?」
「週刊○○、ねーの?」
「え、あ、それならこちらに」
「それじゃなくてよ、先週のやつ」
「あー…すみません。火曜発売なんで昨日入れ替わっちゃったんですよ」
「はぁ?マジかよ!もうねーの?」
「す、すみません」
「んだよ。あー、マジか」
頭をボリボリ掻いて苛立ちを隠そうともしない。
新刊を手に取ってパラパラと捲るも、その表情はかなり不満気だ。
元々そんな顔の気もするけど、ってこれは失言!撤回します。
これ以上絡まれる前に逃げようと、深々と一礼して裏に引っ込んだ。
引き留められなくて良かった。
そういえばいつも1人だけど、友達とか居ないのかな?
あの制服って確か桐皇学園。
というかあの人部活とかホントにやってないのかな?
あ、もしかして3年だから引退した?
もし3年生じゃなくて部活やってないなら、あんな体格いいのに勿体ない。
でもそれって私の見積もり過ぎで喧嘩上等のタダの不良だったり?
『怖い』って認識したはずが妙に気になってしまう頭を軽く振って、作業に戻った。


外見に違わぬ気怠気で荒い言葉遣い。
何となく耳に残ったのは掠れた低音。

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